「その男はやめておきな」と親友に大反対される恋。同意したフリをして、女がとった行動は(1/3)[東京カレンダー

輝かしい経歴に、人も羨むようなステータス。そして、安定した恋の相手。

「完璧」に彩られた人生を、決して踏み外すことなく、まっすぐに歩いてきた。

…彼と出会うまでは。

地位もない。名誉もない。高収入もない。自由以外に何も持たない男とどうしようもなく激しい恋をした時、

迷う女は、平坦な道と困難な道の、どちらの道を選ぶのか。

もし、明日が世界のおわりの日だとしたら───

◆これまでのあらすじ
真衣は恋人の直人と、些細なことで喧嘩してしまった。生真面目な性格の真衣だったが、喧嘩した勢いで、初めて1人でバーに入る。そこで、マスターの塁に出会ってしまい…。

▶前回：絶対に好きになっちゃダメなタイプの男に出会ってしまい…。婚約中の女のついた嘘とは

―2019年3月―

未読にしたままの、塁からのLINEメッセージ。

―この仕事が終わったら、開こう。

ニンジンを目の前にぶら下げられた馬のように、彼からのメッセージを見ることだけを楽しみに、年度末の忙しさと戦う。

そして、時刻は23時を回り、オフィスに残る人もまばらになってきたころ。私はそっと、スマホを取り出す。

クリスマスプレゼントのラッピングを解くような気分で、私は彼からのライン画面をタップした。

Rui：今日もお店は暇だよ〜。真衣さん、来てよー！

たったそれだけのメッセージに、心が躍る。彼と繋がっている感覚に、疲れが癒されて行く。

塁のバーを訪れたあの日から一週間。LINEのやりとりは、まるで中学生のカップルみたいに毎日途切れずに続いている。

中身なんて全然ない雑談がどうしようもなく嬉しくて、恋人の直人に対しての罪悪感を覚えないわけじゃない。

けれど、塁とは他愛ない会話をしているだけ。そう自分に言い聞かせていた。

でも、このときはまだ知らなかった。次に彼が私によこしたメッセージが、私にあんなに大胆な行動をとらせるなんて…。