輝かしい経歴に、人も羨むようなステータス。そして、安定した恋の相手。
「完璧」に彩られた人生を、決して踏み外すことなく、まっすぐに歩いてきた。
…彼と出会うまでは。
地位もない。名誉もない。高収入でもない。自由以外に何も持たない男とどうしようもなく激しい恋をした時、
迷う女は、平坦な道と困難な道の、どちらの道を選ぶのか。
もし、明日が世界のおわりの日だとしたら───
2021年、3月14日。東京。
窓から差し込む木漏れ日を眺めながら、優雅な気分でコーヒーを飲む。
広尾にある低層マンションに越してきて、もうすぐ1年。都心でありながら閑静で洗練された雰囲気を気に入り、新婚生活を迎える場所としてここを選んだ。
心の波打つことのない、穏やかな日常がここにはある。
ふとテレビをつけると、お昼の情報番組ではホワイトデーのお返し特集をしていた。
「…もう、あれから2年か」
ウェッジウッドのコーヒーカップをテーブルに置き、思い起こす。2年前に起こった、奇跡みたいな出来事を。
この穏やかで平穏な日常からは、想像もできないほどに激しく心を震わせた、あの日々。心の中にしまってある、嵐みたいな思い出…。
―ピンポーン
そんな思考をシャットアウトするように、日常的な音が鳴り響く。
当時をよく知る人物が、やってきたのだ。
この記事へのコメント
こわーい。
カクテル言葉は
「運命の出逢い」
🤣