赤坂の夜は更けて Vol.3

23時の赤坂で会う「ご飯友だち」ナンバーワンの男。私はなぜ、彼を好きになれない?

夜更けの赤坂で、男はいつも考える。

大切なものができると、なぜこんなに怖くなるのだろう。

僕はいつも同じところで立ち止まり、苦しみ、前を向こうとして、またつまずく。

41歳、テレビ局のプロデューサーである井上は、ひとりの女と出会う。

彼女の名前はハナ、29歳。ひと回りも年下の女だった。

井上の部屋に行っても、お茶だけ飲んで帰るハナ。あくる日、親友の葵と会った後、「お鮨が食べたい」とまた井上を呼び出した。


結局、井上が赤坂に着いたのは23時頃だった。

ハナが「鮨を食べたい」と言うので、井上の知る限りの鮨屋を当たったが、この時間に入れる店は少なく、深夜営業している店にも空きがないと断られてしまった。

仕方なく、ハナに「お鮨じゃなくてもいい?」と聞くと、

「やだ」

ときっぱり断られた。

井上の生活の中で、ハナの「やだ」に勝るものは今のところ、ない。

自分がハナよりひと回り年上だからといって、振り回されたくはない。ハナが優位に立つような力関係にしたくないのだ。だから、ハナに「やだ」と言われても、井上は一応の抵抗を試みる。

「…まったく。ハナはわがままだな」

そう言うと、ハナは決まってこう返す。

「わがままじゃないの。私は、自分の気持ちを正直に言ってるだけ。だって、井上さんにこうして、ああしてとは言ってないでしょう」

そのめちゃくちゃな論理に、思わず苦笑してしまう。

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