赤坂の夜は更けて Vol.2

赤坂の夜は更けて:あなたを利用してるだけ?寂しい夜に電話するのは、本命の男と限らない

夜更けの赤坂で、男はいつも考える。

大切なものができると、なぜこんなに怖くなるのだろう。

僕はいつも同じところで立ち止まり、苦しみ、前を向こうとして、またつまずく。

41歳、テレビ局のプロデューサーである井上は、ひとりの女と出会う。

彼女の名前はハナ、29歳。ひと回りも年下の女だった。

食事のあと井上の部屋に行っても、お茶だけ飲んで帰るハナ。その真意は?


「ただいま」

ハナは井上さんと別れ、代々木公園にある自宅に戻った。

部屋に入ると、ハナがいつも寝ているシングルベッドで、渉君がすやすやと寝ていた。起こさないよう、忍び足で洗面所に向かう。

富ヶ谷の交差点を抜けて、1本入ったところにあるマンションはもうすでに3軒目の家だ。就職して以来、引っ越しが趣味のようになっている。

三軒茶屋、中目黒、代々木公園。

引っ越し先に規則性はなく、住みたいと思った場所で適当に部屋を探している。今の家は少し古いが、広めの間取りと日当たりがいいのが気に入っている。

―ハナはいつまで経ってもフラフラしてるから、本当に心配。

大学時代からの親友である葵は、会う度にそう言ってくる。彼女がいつも口にする“ちゃんとして”というのは、一体何のことなのだろうか。首をかしげたハナに、葵は間髪入れずにこう言った。

―もう29歳なんだから、ちゃんと一人の人と付き合うの。30歳越えたら、誰にも相手にされなくなるよ。

葵は、広告代理店で営業をしている。ハナとは同じ大学の文学部だったが、大変な努力家で、大学1年生の頃からマスコミ塾に通っていた。しっかり者の葵は、何かにつけてハナの心配をするのだ。

いつも転々と家を変え、そして男も変えるハナを。

明日は、1ヶ月ぶりに葵と会う予定だ。

渉君を起こさないようにそっとやかんに火をつけ、今日2度目のほうじ茶を淹れた。

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