夜更けの赤坂で、男はいつも考える。
大切なものができると、なぜこんなに怖くなるのだろう。
僕はいつも同じところで立ち止まり、苦しみ、前を向こうとして、またつまずく。
41歳、テレビ局のプロデューサーである井上は、ひとりの女と出会う。
彼女の名前はハナ、29歳。ひと回りも年下の女だった。
食事のあと井上の部屋に行っても、お茶だけ飲んで帰るハナ。その真意は?
「ただいま」
ハナは井上さんと別れ、代々木公園にある自宅に戻った。
部屋に入ると、ハナがいつも寝ているシングルベッドで、渉君がすやすやと寝ていた。起こさないよう、忍び足で洗面所に向かう。
富ヶ谷の交差点を抜けて、1本入ったところにあるマンションはもうすでに3軒目の家......
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