私、港区女子になれない Vol.11

「やりたいことがあるなら出資しようか?」港区女子を惑わす、甘い誘い。

港区女子。

それは“女”としての魅力を最大限に利用し、したたかに生きる女たち。

一方、東京で高学歴やキャリアを武器に、自立して生きる女性たちは口を揃えてこう言う。

「私、港区女子になれない」

港区女子・香奈は、これまでの人生、自分で努力することなく多くを手に入れてきた。

青山のマンションを与えられ、2年間不倫関係にあった倉田と別れた後も、すぐに慶應出身のお坊ちゃんで総合商社に勤める洋輔の家で同棲を開始。

タイミングよく洋輔にニューヨーク駐在の話まで持ち上がり、このまま結婚に向けてまっしぐらかと思われた。

しかし顔合わせの食事会で洋輔の母親に門前払いされる。何のフォローもしてくれない洋輔に幻滅した香奈は、ふたたび倉田と連絡を取り合うのだった。


そばにいて欲しい夜に


誰かにそばに居てほしい。

女は、その瞬間に寄り添ってくれる男を選んでしまうものだ。

スマホで“逢いたい”の4文字を送信した後、1分と間を空けずに倉田からメッセージが届いたその時に、もう香奈の心は決まっていた。

『マデュロ』で待ってて

倉田は、香奈に嘘をついていた男だ。

彼は妻子があり、しかも妻は現在、第二子を妊娠している。離婚を匂わす発言を何度も繰り返していたにもかかわらず、である。

そして嘘を問い詰めた香奈に対し、

「これだけ与えてやっているのに、君に責められる筋合いなどない。」

そう、言い放った。

そんな男の元に戻ったところで、未来などない。

頭では理解しているのに、香奈は自分を止める事ができない。今この瞬間の屈辱から、苦痛から、解放されるなら。目先の快楽に逃げる自分を、どうしても止められないのだ。

「大丈夫。困ったら誰かが助けてくれる。」

『マデュロ』のカウンターに腰を下ろしながら、香奈は自分に言い聞かせるよう、小さく口を動かす。

しかし30歳の誕生日を目前に控え、なんの保障もない他力本願な呟きは、香奈の耳にこれまでになく、薄っぺらな音で響くのだった。

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