私、港区女子になれない Vol.6

私、港区女子になれない:ヤドカリの如く男を渡り歩く港区女子。女の自立は要らぬプライドなのか?

欲しいものは自分の力で手に入れる。

大手広告代理店で働く篠田涼子は、それが当然だと信じて努力を重ねてきた。しかし、男に頼って生きる港区女子・香奈の存在が涼子の心をざわつかせる。

香奈は、2年間不倫関係にあった倉田の嘘を知り落ち込むが、すぐに慶應出身のお坊ちゃん・洋輔からアプローチを受け距離を縮める。

しかし洋輔は、涼子の青春時代の元カレ。

2人の関係を知った涼子は、洋輔に要らぬ忠告をし、逆に痛恨のひと言を浴びてしまう。

一方香奈も、倉田の嘘を問い詰めてしまい、関係は破局へと向かうのだった。


ヤドカリの如く男の家を渡り歩く女


「はい、コーヒーどうぞ。」

六本木ミッドタウンの裏手にある、高級マンションのリビング。寝起きのままリビングにやってきた洋輔に、香奈は穏やかな笑みを向けた。

香奈は今、洋輔の家で暮らしている。

倉田と言い合いをしたのは、2週間前のことだ。「出て行け」と言われたわけではないが、その後音信不通となった彼の無言の圧力を感じないわけにはいかなかった。

「一緒に住んでいた兄が結婚することになって。…家を出なきゃいけなくなっちゃった。」

洋輔の家で何度目かの夜を過ごした時、彼の腕の中でぽつりとそう呟くと、洋輔は香奈の髪を撫でながら「それなら家に来ればいいよ。」と言ってくれた。

香奈の言葉を100%信じているかどうかは、正直わからない。しかし彼は香奈をそれ以上問い詰めることはなかった。



「…不思議だな。香奈ちゃんが、ここにいる。」

インスタントコーヒーをテーブルに置き、香奈の手を握って心から嬉しそうに笑う洋輔。

真っ直ぐな愛情を向ける彼の眼差しを、香奈は受け止め切れず目を逸らしてしまう。


「これだけ与えてやっているのに、君に責められる筋合いなどない。」


27歳から29歳という、女が最も美しく咲く時期を共にした倉田から、最後に言われた言葉。

男の愛を利用しているのは自分だと思っていたのに、実際は自分もいいように利用されていた。その事実を、未だ消化できないでいる。

―洋輔は、何が目的なのだろう?

そんな風に考えてしまう私は、心が荒んでいるのだろうか。それとも女の本能が発する、警告だろうか。

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