私、港区女子になれない Vol.3

帰り際に渡された1万円。男からのタクシー代を素直に受け取れない私は、やっぱり港区女子になれない

頑張った先に、幸せはあるの―?

慶應義塾大学卒業後、大手広告代理店に就職し、エリート街道をひた走る篠田涼子・29歳。

30歳の誕生日までに、自分で稼いだお金でバーキンを買うことを目標にしている涼子。しかし、男の愛を利用して生きる女・香奈が男に買わせたバーキンを手にしているのを目撃し、心がざわつく。

一方香奈も、不倫相手の倉田に嘘をつかれていたことを知ってしまい…?


傷心の香奈。しかしすぐに現れる、新しい男。


西麻布のカジュアルフレンチ『ハウス』。弾んだ男女の声を妙に遠くに感じながら、香奈はワイングラスに映る自分の唇をじっと見つめていた。

―倉田さんの奥さん、2人目妊娠中だって。

ここに来る前、食事会までの時間を潰していた『ローダーデール』で、西麻布仲間のが香奈に告げた言葉が頭から離れない。

“そんなはずはない”という希望と、“やっぱり”という諦めが、交互に香奈を揺さぶる。「妻とは別れる」と言っていた倉田の言葉を心から信じていたわけではないにしろ、言葉巧みに自分を騙していたと思うとふつふつと怒りがわいてくる。

「香奈ちゃん、どうかした?」

隣に座る男の声ではっと現実に引き戻され、香奈は「何でもないの、大丈夫」と慌てて笑顔を取り繕う。

「まさか酔ってはいないよね?ワイン1杯で。」

今日の食事会で唯一の既婚である麻美が、香奈をからかう。彼女の夫は外銀勤めで帰宅が遅く、結婚後も気ままにナイトアウトを楽しんでいるらしい。

麻美とは何年か前に雑誌の読者モデル撮影で知り合った程度の仲だが、「香奈がいると場が華やぐから」と、頻繁に食事会に誘ってくれる。

「洋輔ね、前から香奈のこと紹介しろってうるさかったのよ。」

「おい、お前それ本人に言うなよ」と、香奈の隣で洋輔と呼ばれた男が麻美に抗議する。麻美と洋輔は慶應義塾大学の同期で、10年来の友人なのだそうだ。

香奈は、グロスで艶々に仕上げた唇の口角をきゅっと上げ、ゆっくりと見上げるように洋輔と目を合わせた。

遠慮がちに香奈を見つめる洋輔の瞳の奥に、はっきりとした好意の色が浮かんでいる。それを確認した香奈は意味深に頷くと、洋輔に1つ、重要な質問をした。

「…洋輔くんって、どこに住んでいるの?」

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