私、港区女子になれない Vol.5

港区女子になれない高学歴キャリア女の苦悩と、男の愛を利用する女の代償。

頑張った先に、幸せはあるの―?

欲しいものは自分の力で手に入れる。慶應義塾大学を卒業し、大手広告代理店で働く篠田涼子は、それが当然だと信じて努力を重ねてきた。

しかし、男の愛を利用して生きる女・香奈の存在が涼子の心をざわつかせる

一方で香奈は、2年間不倫関係にあった倉田の嘘を知って落ち込んでいた。しかし間髪入れずに新しい男・洋輔が現れる。

洋輔は、よりにもよって涼子の青春時代の元カレ。洋輔と香奈の関係を知った涼子は、洋輔に要らぬ忠告をしてしまい…。


昔の男からの、痛恨のひと言。


「香奈ちゃんは、男を立ててくれる賢い女性だよ。」

まるで頭に冷水を浴びせられたかのようだった。

私はただ、洋輔が香奈にいいように利用されているんじゃないかと心配して、彼のためを思って忠告してあげただけなのに。

「…何それ。」

学生時代の密な時間を4年も共に過ごした洋輔は、たとえ恋人どうしでなくなっても自分のことを理解してくれているものと思っていた。

1限の授業も決してサボらない涼子の生真面目さが好きだ、と言ってくれた洋輔。将来の夢を語る涼子を応援するよ、と言ってくれた。第1志望の広告代理店に内定が決まった時も、涼子の努力の成果だ、と自分のことのように喜んでくれたのに。

それなのに、なぜ香奈を選ぶの―?

今目の前にいる洋輔は、もう昔の彼じゃないのだ、と涼子は思った。色目を使って男の愛を利用するような女を「賢い」と形容するなんて。そんな女を、好きになるなんて。

洋輔に対する失望と同時に、彼をたぶらかしたに違いない香奈への嫌悪感が湧きあがってくる。言い返そうと顔を見上げ、涼子は言葉を失った。

香奈を非難した涼子を咎めるような、諭すような、洋輔の目。

―もう、何を言っても無駄だ…。

行き場のない、やり切れない思いが溢れてしまわないよう涼子は唇をきゅっと結び、振り返ることもなく無言で電車を降りたのだった。

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