チヤホヤされたい東京妻 Vol.16

経験を経て狡猾さを増す女。刺激あふれる東京で、妻たちに心の平安は訪れない?

結婚して妻になった途端、女はオンナでなくなるのだろうか。

かつてはあれほど自分を求めた夫も、結婚後は淡白になり、ただ日々の生活を営むパートナーになった。

結婚生活を墓場のようだと形容する人もいれば、結婚は多くの喜びを得るものだという人もいる。

妻でありながらも葛藤を抱える、豊洲在住の、港区在住のマキコ、目黒在住の亜希、光が丘在住の紗弥香の4人。

自らの欲望に正直に生き続ける女達が下した、それぞれの決断とは…。


こんなに簡単なことに、気がつかなかったなんて


「神尾さん、この袋の名刺ファイリングしといて。」

はい、と答えた遥は、ずっしりと重い紙袋を受け取ると、窓の外に見える高層ビル群をゆっくりと眺めた。

驚くほど短かった義母の入院後、しばらくは同じタワーに住む2家族分の家事を担っていた遥であったが、義母の容体は異様な速さで回復した。

腰を痛めそうな重労働やバレエの送り迎えなどは遥が引き続き担当したが、食事の支度などは今や義母が完全に主導権を取り戻している。

再び暇な時間が訪れることを恐れた遥は、こうして週2回、「お勤め」に出ることを決めた。銀座にある大手の人材派遣会社だ。

娘が学校へ行ってから、支度をし銀座へと出かける。

初めは働くことなど考えもしなかった遥だが、働いている時は「母」としての自分と、「女」としての自分を健全に切り替えることが出来る貴重な時間だ。

電話対応やお茶出しなど雑用のみの簡単な仕事だが、華やかな若い男女の多い職場はそれだけで遥に活力を与えてくれる。

平凡な毎日は、何も食事会に行かずともこんなに簡単に、そして健全に刺激的になるのだということに、今更遥は気がついたのだ。

遥のファッションが参考になる、と話しかけてきた女の子達とランチタイムを共にするようになり、聞き上手な遥はたちまち彼女達から恋愛相談を持ちかけられるようになった。

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