二人の男で Vol.5

恋人への不安と他人の忠告。男が人生最大の決断を下す、いくつかの理由

愛するか、愛されるか。

東京の賢き女は愛されることを選び、愚かな女は愛を貫くというのは、本当だろうか。

堅実な優しい男と、危険な色香漂う男。

麗しき20代の女にとって、対極にある“二人の男”の間で揺れ動くのは、もはや宿命と言える。

そんな彼女の苦しみが、貴方には分かるだろうか。

主人公の詩織・29歳は、自分を溺愛する年下の男・正男と半同棲中の平和な生活を送っている。しかし、年上の男・英一郎に強引に口説かれて気持ちが傾きはじめ、正男との関係にも疑問が生じ始めてしまった。


セルジオ・ロッシのヌード色のハイヒールで足早に歩きながら、詩織は罪悪感と高揚感の間で揺れていた。

今朝は台北から成田に飛び、夕方前に自宅に戻った。

重力の中で酷使した身体はずっしりと重く、普段ならそのままシャワーを浴び、疲労に身を委ねて一眠りすることが多い。

もう少し若い頃は、そのまま出かけて夜中まで遊ぶのもへっちゃらだった。しかし、そんな体力は時間と共にいつの間にか消えていた。

だが、今日の詩織は違う。

仕事用の厚化粧とスプレーで固めた髪を綺麗に洗い流し、もう一度しっかりと、夜の装いに相応しい艶やかなメイクを顔にのせ、髪もふんわりと丁寧に巻いた。普段とは別人のような女の顔が、鏡に映る。

不思議なことに、疲れも眠気も麻痺していた。同じように、危険信号にブレーキを掛ける理性も警戒心も、どこかへ消えてしまったようだった。

「詩織に会いたいな」

詩織を突き動かしているのは、英一郎のその一言だった。

【二人の男で】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo