SPECIAL TALK Vol.29

~“自分はどのように生きたいか”を真剣に考えるには知らない世界に自分をさらし、経験し、考えることが大切~

様々な職業の人と触れ合い、価値観を広めた大学時代

金丸:高校卒業後は、東京大学に進学されていますね。

御手洗:はい。漠然と、経済は勉強した方がいいなと思ったのですが、その前に幅広く学びたいことがあった。それで、まず教養学部に入ってから経済学部に進学できる東京大学に行きました。

金丸:大学時代もやはり海外に行くことが多かったのですか?

御手洗:そうですね。長い休みには、子どもの国際キャンプのリーダーをしたり、バックパックで海外旅行をしたりしていました。あと、自分で学生団体を立ち上げて活動をしていました。月に1度、いろんな分野の働いている人に話を聞きに行くフィールドワークを企画していました。漁師さんと一緒に漁をしたり、歌舞伎役者さんから伝統を守りつつビジネスとして事業を継続する難しさを伺ったりしました。国によってだけでなく、仕事の分野によっても価値観は違います。学生だからこそ聞けることも多くて、とても勉強になりました。

金丸:学生時代から一歩引いた視点で、自分を見ることができていたんですね。就職については、どのように考えていたのですか?

御手洗:大学時代に非営利分野で活動をしていて感じたのは、既存のビジネスの世界の回り方を知らないまま非営利の分野をやっても、補完的なことしかできないということです。本当に世の中にいい変化を生もうと思ったら、ビジネスの世界も学ぶ必要があると考えました。

金丸:まずは営利組織を学ぶことが大切だと?

御手洗:はい。それでコンサルティング会社に興味を持ったんです。いろんな分野のビジネスを見ることができ、経営者の意思決定も間近で見られる。それに世界を舞台に仕事がしたかったこともあって、マッキンゼー・アンド・カンパニーに就職しました。

金丸:マッキンゼーには何年ほどいたのですか?

御手洗:2年ちょっとです。一度退職してブータンに行き、その後再入社しました。

大手小売り企業の大改革を担当。大きな成果を残す

金丸:マッキンゼー時代で最も印象に残っているのは、どんな仕事ですか?

御手洗:ある大手小売りの現場のオペレーションを変える仕事です。入社してすぐでしたが、東北支社担当にも抜擢してもらって。

金丸:大改革を任されたんですね。しかし、小売りは毎日のオペレーションの積み重ねです。大勢の人たちのルーティーンを変えるというのは、一番大変ですよね。

御手洗:そうですね。人の考え方や行動を変えていく難しさを学ぶことができました。

金丸:結果は出たんですか?

御手洗:なんとか。

金丸:それは頑張りましたね。

御手洗:当時の改善したことはいまも定着しているそうで、とても嬉しいです。

金丸:で、ブータンの話はいつ出てくるんでしょう?

御手洗:そうですよね(笑)。ブータンの話は、入社して2年目の会社を辞めようとしていたときのことなんです。

金丸:辞めようと思った、きっかけは何だったんですか?

御手洗:自分が社内での仕事の評価にこだわりはじめていることに、不安を感じたんです。マッキンゼーは半年ごとに業績が評価されるシステムなんですけど、正当に評価してもらえるので、つい成績を上げることに夢中になってしまうんですね。仕事自体もすごくエキサイティングだし、このままいくとマッキンゼーでの仕事に没頭して出世一辺倒になってしまう、と感じたんです。それで、いったんリセットして目線を上げたいと思いました。ちょうどそのとき、民主化したばかりのブータンが、経済的な自立を目指して産業育成をリードしてくれる人材を探しているという話が舞い込んできたんです。

金丸:すごいタイミングですね。

御手洗:当初はインドのデリー支社に持ち込まれた話でしたが、日本支社にその話がまわってきて、推薦をしてもらいました。

金丸:まだ入社2年目なのに、なぜ御手洗さんだったのですか?

御手洗:会社ではずっと社会的・公的領域に興味があると公言していて、若手を集めた勉強会を開いたりもしていました。あとは、「御手洗なら、きっと真剣にやるだろう」と思ってもらえたのかもしれません。

金丸:やはり、一つひとつの仕事にしっかり取り組むことは大切ですね。

御手洗:本当に。このときほど、そう思ったことはありません。ちゃんと仕事をしていると、それが信頼になって次の道が拓けるんですね。

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