靴と東京と私 Vol.1

靴と東京と私:ルブタンのレッドソールに宿るプライド。女の裏切りはいつの日も突然…

いつの時代も、靴が女性を素敵な場所へと誘う。

どんな靴を履くのか。そこに女性の今後の人生に対する、強い意思が宿る。

2017年の東京を歩きゆく女たち。

彼女たちは、人生のパートナーとして、どのブランドの靴を選ぶのか。

靴と東京と私。靴なしでは、女の人生は語れない。


【クリスチャン ルブタンを履く女】

名前:沙織
年齢:29歳
職業:大手出版社勤務(女性誌担当編集者)
勤務地:青山一丁目
住まい:外苑前
好きな店:『ラス』『ルメルシマン オカモト』『オルグイユ』

いつの日も降り注ぐ上司からの嫌味


「まさかとは思うけれど...明日締切のページ、このまま入稿なんてしないわよね?」

背後から、副編集長の愛子に赤文字が入った原稿を机の上に叩きつけられた。バサリと原稿が散らばる音と共に、愛子の嫌味が胸の奥にズシリと響く。

「すみません...至急書き直します。」

「だから頭の悪い人って嫌いなのよ。自分のこと、可愛いとでも思ってない?あなた、大したことないから。それを自覚してちょうだい。」

企画にしろ、ページにしろ(外見のことまでも)、愛子は毎回難癖をつけてきては、言い終わった後に痛快な表情を浮かべている。どうしたらここまで性格が歪むのだろうか...

女性誌の仕事は一見華やかに見えるが、内情は“華やかさ”と対極にある。寒空の下の早朝ロケは当たり前、そこから何本もの取材をこなし、編集作業に取り掛かれるのは夕方から深夜にかけて。締め切り直前の編集部はまるで戦場のように、皆鬼の形相で殺気立っている。

(必然的に、働いている女性たちの顔には深く濃いシワが刻まれる。)

愛子は編集部に大量に送られてくるコスメサンプルのお陰で、42歳とは思えぬ白く美しい肌をしており、端正な顔立ちをしていた。しかし、女性編集者が放つ、特有の強固なオーラが美しさを半減させている。

—沙織、また愛子さんから叱咤されてるの?一緒に頑張ろうね。

同期の美奈子がデスク越しにニコリと笑いながら無言のメッセージを投げかけてくる。本当にね、と軽くアイコンタクトで返しながら、履いていた靴をデスクの下に放り投げた。

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