Wakiyaメン Vol.1

Wakiyaメン:きっかけは、高嶺の花との恋。担々麺さえも恋愛ツールにしてしまう男たち

事の発端は、数日前にオサムの自宅マンションで開いた鍋パーティーまで遡る。

大手町にある外資系IT企業に勤務するオサム。住んでいるのは、三軒茶屋の駅から世田谷通りを6分ほど歩いた場所にあるマンションだ。新しくはないが、9万円の家賃の割には広めの1LDKで気に入っている。

ここで、男女3人ずつの鍋パーティを開いた。男はオサムたち3人、女の子は、美優と美優の会社の同僚だ。

美優は准一の前の彼女の友達の同僚という、近いのか遠いのかわからない繋がりで知り合った。それからは、このメンバーでもう何度も飲んでおり、友達としてすっかり打ち解けていた。

美優は笑った時に目尻が下がり、透き通るような白い肌と、柔らかい髪を持つ、健康的な女の子だ。26歳、外資系アクセサリーブランドで広報をしている。

どこからどう見ても、モテる女の子だ。だからオサムは密かに狙っていたものの、「どうせ無理だろうな」と諦めていた。

だが、そんな美優のハートを掴んだのが、この鍋パーティーだった。


盛り上がったパーティー。その意外な結末・・・


19時から始めたパーティーは、大いに盛り上がった。北海道のカニ、新潟の日本酒、鹿児島の焼酎、仙台の牛タンなど、みなが出身地の名物を持ち寄る形となり、わいわい楽しんだ。

だが、気がつくと一人、また一人と寝息を立て始めたのだ。年末のため仕事と忘年会で、みな疲れていたのだろう。

オサムは飲むほどに目が冴えてくるタイプで、こんな状況にも慣れていた。そして気がつくと、起きているのはオサムと美優だけだった。

「みんなよっぽど疲れてたんだね。美優ちゃんは大丈夫?」

「寝ちゃったね~。私は全然大丈夫だよ。終電まで寝かせといてあげよっか」

そう言って美優は時計を見上げて、「あと1時間くらいかな」と呟いた。

しんと静まる部屋で少しの沈黙の後、美優が口を開いた。

「締めの麺、少しだけ食べたかったけど、2人じゃちょっと多いよね」

駅前の『肉のハナマサ』で買った5食入りのうどんはあるが、これをわざわざ空けるのも気が引けたのだろう。

残念そうに言う美優の顔をみながら、オサムはアレを思い出した。

この記事へのコメント

Pencilコメントする

コメントはまだありません。

【Wakiyaメン】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo