東京の美女たちは、よく働き、よく遊ぶ。
仕事をし、多くの人と関わることで彼女たちはさらに洗練されていく。
社交的で、媚びることなく、誇りを持って人と接する彼女たちは、公私に渡って幅広いネットワークを持っている。
この物語で紹介する涼子(32歳)は、まさにそんな女性。
恋愛そっちのけで仕事に邁進していたが、海外赴任から噂の男・浩市が帰ってきたことで、涼子の日常に小さな波乱が巻き起こる……?!
仕事も遊びも手を抜かない、32歳キャリア女子。
大手ネット広告代理店で総合職として忙しく働く涼子。
スラリと背が高く、長い手足を持ち、目鼻立ちのはっきりした華やかさを持つ女性だ。
日ごろの激務は露ほども感じさせず、東京の街を颯爽と闊歩する。
社交的で頭の回転が速く、会食には欠かせない存在として、声を掛けられる事が多い。涼子もそういった場は好きで、多少の無理をしてでも掛けつけるのが、彼女の好かれる理由のひとつ。
もともと、美味しいものを食べるのが何よりのストレス発散法であるため、会食以外でも残業後に後輩を誘って食事に行く事も多い。
男性からデートに誘われるのも日常茶飯事。世間ではエリートと呼ばれるような男性たちと付き合ってきたが、恋愛よりも仕事を優先させてしまい結婚まで至る相手はいなかった。
それに対して特に不満は持っておらず、今の生活を謳歌しており、まわりに心配されるほど焦っていないのが実情だ。だが、年明け早々に事件が起こった。
それは、3年間の海外赴任から噂の男・佐山浩市(41歳)が帰ってきたのが始まりだった。
「ねえ知ってるよね、佐山さんのこと」
同期の遥と『ガレット スタンド』へランチに行くと、彼女が嬉しそうに切り出した。
「もちろん顔と名前は知ってるけど、今まで接点なかったし正直それどころじゃなかったからよく知らないんだよね」
「本当にあんたって、社内の男に興味ないのね」
「まあね。社内恋愛なんて怖くて絶対できないわよ」
ガレットに盛られた卵の黄身を、ナイフで潰しながら涼子は笑った。