代々木上原の女 Vol.11

代々木上原の女:30歳での婚約破棄。平凡で幸せなはずの未来が、私は全く欲しくない

埼玉県出身のユリ、大手損害保険会社でエリア総合職として勤務。

30歳の誕生日に同期の太一からプロポーズを受け、代々木上原から荻窪に引っ越した。しかし、結婚式の準備で喧嘩をしたユリは家を飛び出してしまった。


平凡な幸せが恐怖に変わるとき


半年後に迫った入籍と挙式のために同棲を始めたユリだったが、「何にする?」「何でもいいよ」の押し問答に耐えきれず家を飛び出してしまった。

ユリ30歳、11月の出来事だった。

プロポーズのときに感じたかすかな違和感は大きくなるばかりで、それを受け止めようにも擦り合わせようにも、その気力が全く湧かなかった。

毎日繰り返される太一との「何でもいいよ」と「それなくない?」のやりとり。一見穏やかな太一は、ユリの好きなようにさせてくれると見えただけで、本当は自分の思い通りにしなければ済まない男だったようだ。

仕事でヘトヘトになって、帰って家事をして、結婚式の準備をして太一の相手をして。これがあと何十年続くのだろうかと考えたらぞっとした。これにもし子供まで加わったら、私の人生はどうなってしまうんだろう。

―結婚は人生の墓場だ。

そんな使い古された言葉は過去のものだと思っていたが、案外真実なのかもしれない。そう思うようになってきた。

ここから太一と社内結婚して、課長代理で年収1,000万の太一と、エリア総合職で年収520万のユリは、間違いなく平均より上の暮らしができる。しかし、太一は転勤の可能性も高いから、その時は仕事を辞めてついていかないといけなくなるかもしれない。

もし仕事を辞めて彼についていったらどうなるんだろう?地方で適当なパートを探して、仕事をする?それとも専業主婦になって子育てをしながら、家庭を守る?

平凡で幸せなはずの未来が、私は全く欲しくない。太一との結婚が希望ではなく恐怖になっていた。

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