美人探偵・貴崎桜子の事件簿：彼女から2度目の誘い。計算づくの上目づかいをしてくる彼女は脈ありか？(2/3)[東京カレンダー

今夜桜子から指定されたのは、銀座のキャビアバー『17℃』。店内には、一目で高価とわかる調度品が並んでいる。

約束の時間を20分経過したが、やはり彼女は現れない。私は静かに『カッシェロ・デル・ディアブロ』が注がれたワイングラスを傾けながら彼女が来るのを待った。

さらに10分が経過した頃、ようやく彼女が姿を見せた。彼女は今日も、完璧なまでに美しい。

「あら、早いのね」

それだけ言うと、彼女もワインを注文して、ソムリエの男性に私を紹介してくれた。

「あ、こちらはソムリエの浅原さん」

桜子はこの店をよく訪れるらしく、浅原さんとも顔馴染みのようだ。こんな高級そうなバーに、一体いつ、誰と来ているのだろうか。彼女の謎は深まるばかりだ。

「ところで浅原さん、今日はマミさんは？」

マミさんというのが、桜子が電話で言っていた美人ソムリエのことらしい。彼女はすでに謎解きに夢中のようだ。

「それが申し上げにくいのですが、彼女はこの2日間欠勤しておりまして……」

「あら、お休み？体調でも悪いの？」

「いや、そういうわけではないのですが……」

なんだか浅原さんの歯切れが悪い。桜子は問い詰めるように続けて聞いた。

「そうじゃない？じゃあどういうことです？差し支えなければ教えてくださらない？」

「そうですね……。桜子さんだから、特別に……」

浅原さんは、チラリと私の方を見た後、私たちしか客のいない店内で、声をひそめて話し始めた。

「実は、マミは失踪してしまったんです」

「え？！」

桜子と私の声が重なった。

「いや、何と言うか、失踪は言いすぎかもしれませんが、連絡が取れなくなっておりまして。今まで無断欠勤なんかなかったので私たちも心配で、どうしたものかと困っております」

桜子は「嫌な予感がするわね」と呟いた後、なぜ今日私をこの店に呼んだのか、その理由を聞かせてくれた。

「マミさん、最近ソムリエバッジを失くしたらしいのよ。それが『ディアブロ』で見つけたソムリエバッジの、何かのヒントになるんじゃないかと思って彼女の話を聞きたかったのに……」

それだけ言うと桜子は右手を顎にあて、深く考え始めた。

「ねえ、浅原さん。マミさんがいなくなる前、何か変わった出来事はなかった？ささいなことでもいいから、教えてくださらない？」

「実は、マミがいなくなる前日の夜、これからとあるレストランのオーナーに会うのだと言っていました。相手が誰なのかは分かりませんが、その人が何か知っているかもしれません」

「なるほど、その可能性は高いわね。でも、一体誰なのかしら」

また桜子は考え始め、沈黙が訪れた。

ただの無断欠勤なら良いが、失踪となると大ごとだ。さて、どうしたものか……。私も深く考え始めた。ところで、そのマミという女性は一体どんな人物なのだろうか。

「マミさんの顔写真とか、ないのかい？」

私の問いかけに、桜子は何かをひらめいたように少しだけ明るい顔になった。

「そうだ、彼女のSNS見てみる？彼女の顔も分かるし、もしかしたら何かヒントになる事が書かれてるかも！」

言うのと同時に、桜子はスマホを取り出した。すると、桜子は画面を見ながら大きく目を見開き、驚いた表情を見せた。

マミのtwitterを見ると、ヒントどころか例の如く謎が隠されていたのだ。