「明日、朝早いんで。」嘘も方便と言いますが
「すみません、お手洗い行ってもいいですか?」
紀行からのLINEが気になり、お店へ入ってすぐにお手洗いへ直行する。 時計を見ると、23時を少し過ぎていた。紀行と裕太は違うグループだ。行っても、バッティングはしないだろう。そして何より紀行の会社は裕太の会社より規模が大きく、交友関係もかなり華やかなことで有名だった。
ー了解です、行きます♫こっち終わってからなので、30分後くらいになるかと。ー
慌てて化粧を直し、クロエの香水を胸元につけて気合を入れ直す。こちらは適当に切り上げよう。でも、裕太を手放すつもりはない。フルーツ系のカクテルを飲みながら、携帯電話で時間をチェックする。23:42だった。
「裕太さん、すみません。すごく楽しいしお酒も美味しいし、もっと一緒にいたいのですが... 明日、“朝が早くて”」
「そうなんだ。それは残念だけど仕方ないね。じゃあ一杯飲んだら帰ろうか」
広いようで狭い東京・恵比寿界隈の交友関係
五差路を過ぎ、少し曲がった所の線路沿いにあるマンションのドアを開ける。結局、裕太は家の前までタクシーで送ってくれた。
「裕太さん、引っ越し費用とか家賃出してくれないかな...」
窓を開けるとすぐそこには山手線。線路の音は意外にうるさい。でも、渋谷区東3丁目で恵比寿という立地で12.8万円ならば、それくらいの我慢は必要だろう。家賃も15万円くらい払えれば部屋の広さも立地もアップグレードできるが、今は家賃より靴やカバンに使いたい。
「やば!!行かないと」
再びヒールを履き、勢いよく夜の恵比寿へ飛び出す。鞄の中で携帯が鳴っている。裕太からお礼メールが入っていた。恵比寿駅前のソフトバンク前に着いてから返信を打った。
「私もとても楽しかったです!またご飯行きたいです。今日はもう寝ますね、お休みなさい❤」
裕太と付き合って、結婚まで行けばだいぶ生活が楽になる。このまま良い感じで進めたい。スキップしながら紀行が指定したお店のドアを開ける。
しかしとびっきりの営業スマイルでドアを開けた瞬間に、凍りついてしまった。
「え、嘘でしょ...」
紀行の隣には、裕太が座っていた。
次週10月14日金曜日更新
まさかの鉢合わせに大ピンチ!?しかしここからがエビージョの真骨頂だった
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