大手総合商社。役員まで昇りつめるのは、同期200人の中で2~3名と言われる中、100分の1の椅子を目指す男がいた。その名はタカハシ。
これからお話しするのは、『東京人生ゲーム』で拓哉と違い、地味で堅実な人生を送ってきたタカハシが、大手総合商社での熾烈な競争を勝ち抜きながら“最高峰”の地位である役員を目指して昇りつめていく物語です。
vol.1:38歳。ハードなコンゴ駐在と引き換えで見えてきた"最高峰"への道程
拓哉、お前が「他人と比較する人生」を捨てた頃、俺はといえば・・・
部長昇進間近で“最高峰”への道も近い…そう言いましたっけ?僕。
たしかに部長には昇進しましたよ。でも僕が思ったタイミングよりも数年遅れての昇進でした。
僕の下に出てきた東大卒のスタープレーヤーがさっくり部長の座を奪っていったんです。あの時は本当に辛酸をなめる思いでした。
マラリヤや狂犬病、HIVなど、コンゴで生命の危険すら感じるような経験をしてきた僕にとって、NYという華やかな駐在地で実績をあげた彼に部長までもっていかれるなんて、正直愕然としました。
「またお前かよ」
心の中で毒づきました。「華やかでキラキラとしたキレイな世界でやってきたやつらにだけは負けたくない」と、ずっと思って頑張ってきた僕にとってはまさに屈辱。心の中でギリギリと大きな悲鳴をあげるくらい悔しかったですよ。
それは、拓哉が最初にプロジェクトリーダーに抜擢された時に感じたのと、似た感情だったかもしれません。
人間として器が小さいですか?
そうでしょうか。悔しがることは恥ではないと僕は思います。それは人生を賭して全力投球でやってきた人間にしか分からない感覚かもしれませんね。
拓哉といえば40歳の頃、会社を設立したと聞きました。「資本主義に嫌気が差した」なんて言ってたらしいですが、そんなのはただの逃げ。負け犬の遠吠えにしか聞こえません。正直、昔は拓哉に嫉妬していましたよ。「なんであいつばっかり」って、何度思ったかわかりません。でももう拓哉が、僕の嫉妬の対象になることはないのかもしれません。
そうそう、男の嫉妬の醜さといったら想像以上でしたよ。女性たちの嫉妬や妬みなんてかわいいもの。容姿なんかの表面的な事や、付き合っている相手のスペックを陰でコソコソ言ってるくらいですか?嫌な気分になることはあれど、実害なんてないですよね?
男の嫉妬は出世を阻害したり、社会的地位を脅かしたりと、その後の人生を大きく左右することもありますから、本当に恐ろしい。
僕ら商社マンの妬み合いだって舐めてもらっちゃ困ります。ライバルを蹴落とすためなら、汚い事も平気でやれる人間がいることを、嫌というほど見てきました。