野心のゆくえ:35歳で2度目の起業を成功。望むものを手に入れても、さらに上を目指す理由とは?
ちょっと冴えない男が、いくつかの出来事をきっかけに、劇的な変貌を遂げることがある。
それは東京ドリームと言っていいほどの、鮮やかなサクセスストーリー。
この物語の主人公は、まさにそんな男。
ポジティブで野心家、人生を楽しむ事をモットーにしている男の、成功までの約10年にわたる物語である。
第1話:同期と比べて壁にぶち当たる27歳男。尊敬する先輩の一言に心えぐられた夜
第2話:会社員に限界を感じ、起業を果たした30歳。順調に業績を伸ばすも、1年後は……?
第3話:失敗を糧にできるかの分かれ道。10年後を見据え、33歳が今やるべきこととは
35歳:新たなビジネスを立ち上げ、人生のパートナーも得る
「よし、今月も順調に売り上げを伸ばしているな。」
とある休日、翼は自宅でパソコンを見ながら小さく呟いた。
35歳になった翼は、神楽坂に住んでいた。
MBA留学を終え、日本に帰国するとすぐに2度目の起業を果たした。会社をスタートさせてもうすぐ半年になるが、売り上げは着実に伸びている。
留学中も砂田から日本のトレンドを聞き、自分でもマーケットの調査を欠かさなかった。資金調達にも抜かりはなく、万全の体制を整え、帰国後すぐに船出を果たした。
―次は必ず成功させる―
数年間、この思いを胸にとにかく突き進んできた。
今回はアプリを使ったケータリングサービスの会社を作った。開始当初は個人宅向けの注文が多かったが、最近ではイベントスペースで開かれる200人規模のレセプションパーティーの仕事も入るようになってきた。
一度目の失敗で得た教訓とMBA留学で学んだ知識も、大きな自信となり翼の背中を押してくれる。
そして何より、保奈美の存在も大きい。彼女には、起業準備で色々と助けてもらったのだ。
彼女も翼と同じタイミングでアメリカに留学していた。SNSで繋がり、アメリカ生活での驚きや苦労を話し、オンライン上で励まし合った。互いに勉強に忙しく、実際に会う機会はほとんどなかったが、そうして接していると、知り合った当時の彼女が放っていた棘々しさは弱まった。
ライバル心を燃やしていた彼女にとっても、翼は次第に心を許せる相手に変わっていったようだ。