2015.07.21
SPECIAL TALK Vol.10クリエイターへの憧れから広告業界へ同時に家業で小売をスター
金丸:大学卒業後は、電通に就職されました。電通を選んだ理由は?
設楽:一芸に秀でた人、たとえば大工やミュージシャン、デザイナーへの憧れがずっとありました。それで一芸に秀でていない私が、クリエイターに近づくためにはどうすればいいのだろうと考えたとき、広告の世界かなと思ったんです。プロを集めてプロデュースするのも作品のひとつかなと。
金丸:なるほど。同じ時期に、家業ではお父様が新規事業をスタートさせていますよね。
設楽:はい、オイルショックの影響で大打撃を受け、家業が傾きかけたんです。ダンボールだけではもう食べていけないと、経営の多角化を図るために、洋服を扱う小売業を立ち上げました。小売業を選んだのは、父自身がオシャレだったことと、日銭が入る商売がいいと判断したから。私が就職した翌年の1976年のことです。
金丸:そうなると、電通と家業の二足のわらじを履いていたのですか?
設楽:当然のことながら、副業は禁止です。上司に呼ばれて「お前、副業やっているだろう?」と言われたこともありますが、「いやいや、副業はそこからお金を得ることですよね。私は逆にお金をつぎ込んでいるんです」と反論していました。言うならば、趣味の延長ですからね。結局、電通に在籍した8年のうち、7年はビームスと両方やっていました。
金丸:電通での経験が、いまでも生かされていると思うことはありますか?
設楽:ものの考え方や組み立て方を学べたことは大きいですね。いまでも非常に役に立っています。それから人脈やブレーンの使い方、経営者の在り方も学ばせていただきました。経営者には2種類あり、一つはマネージメント型、もう一つはソフト型です。私はどちらかというとソフト型。ノウハウある人たちを集めて、ひとつのものを創り上げていくのが得意だということに、気づくことができました。
金丸:初期のビームスといえば、平凡出版(現・マガジンハウス)の『POPEYE』とのつながりが強い印象がありました。
設楽:そうですね。当時、電通は築地にあり、橋を渡ったところに平凡出版がありました。歩いていたら、たまたま学生時代の悪友に会いまして。それが、現在『ソトコト』をやっている、小黒一三です。彼を通じて、『POPEYE』の編集の方々と知り合いました。彼らにアメリカの流行を教えてもらい、その商品を私たちが買い付けて、雑誌に掲載してもらうというサイクルが出来上がりました。
LAで出逢ったセレクトショップの原点
金丸:ところで、ビームスという店名の由来は何でしょうか?
設楽:父の会社が「新光」という屋号でしたので、「新しい光だからビームはどうか?」と父が提案し、そこにSをつけたのが私です。
金丸:お父様との合作なんですね。
設楽:さらに意味が加わっていき、いまでは3つの意味があります。ひとつは光線のビーム。そして、人の文字のように重なって、屋根や船を支える「梁」。あとは、動詞でbeaming faceの意。「太陽に向かってほほ笑む」とか「極上の笑顔」という意味なんですが、うちではそれを「極上の笑顔を世の中に提供していこう」というふうに捉えています。
金丸:小売業には様々なビジネスモデルがありますが、セレクトショップにしようと思ったのはなぜですか?
設楽 実は、当初から構想があったわけではありません。セレクトショップという言葉もない時代でしたから。
金丸:では、どこからこのような発想が生まれたのでしょうか? 非常に革新的だったと記憶しています。
設楽:初めてロスに渡ったとき、知人の紹介でUCLAの学生のドミトリーを訪ねました。そこでは、学生がみな部屋に違うものを飾っていて、造りは同じなのにどれも違う部屋に見えました。それがすごく鮮烈だったんです。どの部屋も個性に溢れていました。
金丸:その体験がいまのビームスに繋がっていると?
設楽:そうですね。だから、最初はビームスの前に「アメリカンライフショップ」とつけていました。原宿で6.5坪。3坪は荷物を置いていたので、実質の売り場は3.5坪、7畳ですよ。それをUCLAの学生部屋に見立てて、パインテーブルを中心に置き、学生の部屋にありそうなろうそく立てがあったり、ジーンズやスニーカーをお香とかネズミ捕りと一緒に陳列してみたり。日本人の誰もが憧れていたアメリカの大学生のライフスタイルを、7畳の空間に再現しようといろいろ試しましたね。アメフトが好きな学生、音楽が好きな学生と、それぞれが自分のテイストでモノを選び、自分らしい部屋を作り上げている。そういう雰囲気をごく自然な形で、お客様に提案できていたと思っています。商品が売れたらまた買い付けにいって、ということを繰り返していくうちに、だんだん洋服中心の店になっていきました。
金丸:売れるものが残っていったということですね。商品も設楽さんご自身が興奮したものを選ばれていたのでしょうか?
設楽:そうですね。言うならば、「これ好きな人は、この指止まれ!」というやつです。テイストが合わない人は、もう仕方がないかなと。当時はとにかく情報が少なくて、若者はみな飢えていました。1976年2月にビームスがスタートし、その夏に『POPEYE』が創刊して、ようやく情報文化の発信が始まったように思います。
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