SPECIAL TALK Vol.9

~ANAに脈々と流れるDNA。リスクをとって常にチャレンジをしていくこと~

金丸恭文氏 フューチャーアーキテクト代表取締役会長兼社長

大阪府生まれ、鹿児島県育ち。神戸大学工学部卒業。1989年起業、代表取締役就任。産業競争力会議議員、規制改革会議委員、内閣官房IT本部 本部員、経済同友会副代表幹事、NIRA代表理事を務める。

金丸:歴代の社長の姿勢を長年見てこられたわけですが、ご自身は社長として何を大切にしていきたいとお考えですか?

片野坂:歴代の社長がそうであったように、常にリスクをとって新しいことに挑戦し続けたいと考えています。リスクというものは、考え出したらキリがありません。昔、パンアメリカン航空が世界一周路線を開設し、最終的には破産してしまったと。よく、拡大路線は危ないという声も聞きますが、航空会社というのは「JUST FLY」だと思うんですね。たとえば鉄道会社は、電車を走らせるには線路を敷かなくてはなりません。自動車会社は、車を生産するには工場を建てなければなりません。いったん突き進んだら、簡単には撤収ができないのです。その点、航空会社は、飛んでダメだったら、止めて引き返せばいい。非常にシンプルです。

金丸:リスクばかり考えすぎるのは、よくないということですね。

片野坂:もちろん、航空会社も様々なリスクに晒されています。リーマンショックに代表されるように景気変動や石油価格変動の影響を受けやすいですし、テロやSARSのような感染症も脅威です。そのほか台風や地震、火山の噴火など自然災害の影響もあげられます。こうした外的なリスクに対する備えを万全にした上で、挑戦し続けることが大事だと思います。

ANAのDNAを継承脈々と受け継がれる言葉とは

金丸:ANAの歩みを振り返ると、常に新しいことに挑戦し、実現されてきたように感じます。

片野坂:確かに、ANAにはチャレンジ精神というDNAが、脈々と受け継がれていますね。

金丸:どのようにして、そのDNAを引き継がれているのでしょうか?

片野坂:歴代の経営者の言葉が引き継がれていることにあると思います。初代社長を務めた美土路昌一社長の「現在窮乏、将来有望」という言葉は、今も本社の会議室に掲げてありますし、社員全員が知っている言葉です。2005年に就任した山元峯生社長は、「傲は衆悪の先駆け、謙は修繕のもと」という言葉を残しました。

金丸:すごく意味深い言葉ですね。どういう意味なのでしょうか?

片野坂:傲慢さと謙虚さ、それぞれの意味を伝える言葉です。2009年に就任した伊東信一郎社長の言葉は、「自分の足で立つ」。リーマンショックの影響で経営が最も厳しい時期だったのですが、伊東社長がこの言葉を言い続けたことで、社員が一丸となって取り組み、わずか1年で業績を回復させました。幕末の激動の時代に若手を導いた吉田松陰もそうなんですが、自分の想いを言葉にして言い続けることが大事だと思います。まずは自身のビジョンを何度も語り、社員に理解してもらう。そうして理解してもらえば、あとは同じビジョンに向かって突き進むことができます。

金丸:前任の伊東社長はANAを低迷から脱却させ、公正な競争環境を訴えて、羽田空港の国際線発着枠の拡大を実現しました。それを受けて、片野坂社長が今後どのように会社を率いていかれるのか、私も利用者のひとりとして注目しています。

片野坂:ありがとうございます。私が責任を最も痛感するのは、世界各国の職場を訪問するときなんです。全世界に3万3,000人の社員がいて、みんなが笑顔で私を迎えてくれる。その笑顔を見ると、がんばろうと心の底から思います。

金丸:今後に期待しています。本日はありがとうございました。


※脚注※
※1.YS−11…日本の航空技術陣の手で生まれた戦後初の国産中型輸送機

※2.45/47体制…1970~1980年代、日本政府が国内航空会社の事業範囲について定めた産業保護政策の通称

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