
~囲碁の盤面には経営の縮図がある。リーダーを目指す方こそ、挑戦して欲しい~
囲碁から垣間見える経営者ならではの気質
万波:囲碁を嗜む経営者の方々には、共通する興味深い特徴があると思います。それは、皆さん“100点満点を取れる手”をすべて教えてほしい、とおっしゃることです。
金丸:100点満点というのは、どういう意味でしょうか?
万波:一般の方は、定石(※)を的確に覚えるよりも、おおまかに「このあたりに置けばいいんですよ」ということを教えてください、というケースが多いんです。一方、経営者の方は、どこに打てば100点なのかを全部覚えようとします。こちらが「100通りあるから難しいですよ」と言うと、「すべて覚えるから、教えてくれ」とおっしゃいます。これは経営者以外の方にはあまり見られない傾向ですね。
金丸:私もここに石が来たときはこうやると有利になる、という手を全部教えてくれと言いました。それを何回もシュミレーションして覚えました。
万波:一般的に覚えることを敬遠する方が多いです。私もそうなのですが(笑)。
金丸:私はゲームで囲碁をすることもあるのですが、ゲームの良さは、負けたときに遡れることです。あのとき、ここに打っていれば、展開が変わっていたんだな、ということがわかります。
万波:失敗から学ぶということですね。すごく大切な姿勢だと思います。
金丸:先日、ある方と一局設けまして、最初は私の読み通りの展開になりました。これは勝てそうだなと思っていたところ、それが心の隙になってしまったんですね。大石(※)を取ることばかり考えていたら、一つ間違ってしまったんです。逆に窮地に追い込まれて、負けてしまいました。
万波:欲を出すと、そのような結果になることが多いですね。
金丸:すごいショックで、普段の仕事では引きずらないのに、2週間ぐらい悔しさを引きずってしまいました。
万波:私が教えている経営者の中には、対局に負けて「自分の人間性を疑う」とまで言った方がいます。経営者の方には、そういった負けず嫌いな傾向が絶対に見られますね。
東カレ読者に伝えたい、囲碁の薦め
金丸:もし万波さんが東京カレンダーの読者に囲碁の魅力を伝えるとしたら、どのように伝えますか?
万波:いくつかありますが、まずは軽いところから(笑)。囲碁が強い男性は、囲碁好きな女性にすっごくモテるんですよ。
金丸:本当ですか?
万波:本当です。以前、囲碁ファンの女性の方々と一緒に七夕のお願いごとをしたことがありまして、その短冊を見ていたら、多くの女性が「囲碁の強い人と付き合えますように」と書いていて、びっくりしました。
金丸:英語のレッスンに通っている人が、英語が得意な彼氏を欲しがるのと同じですね。逆に女性に対して囲碁を薦めるとしたら、いかがですか?
万波:囲碁好きな方は男性の方が多いので、やっぱりお姫様になれます、とお伝えしたいです(笑)。実際に囲碁を通じてお付き合いを始めた方、ご結婚された方もたくさんいますしね。
金丸:そういった側面もあるんですね。ほかには、いかがでしょうか?
万波:経営に携わっている方、そういったポジションを目指している方にこそ、囲碁を薦めたいです。今、囲碁を趣味にする経営者の方々が本当に増えています。それは、今日の話にもあるように、やはり囲碁には経営に通じるものがあると思ってくださっているからなんですね。囲碁というのは、何も考えずにガムシャラに打ってもダメなんです。最初に戦略を考えることが重要ですし、相手の出方によって、まったく違う手を考えなければなりません。囲碁を通じて、様々なことが学べると考えています。
金丸:同感です。とくにリーダーを目指す方には、ぜひチャレンジしていただきたいですね。きっと学ぶことは多いと思います。本日はありがとうございました。
※脚注※
詰碁…囲碁の部分的な死活(石の生き死にのこと)を問う問題のことプロへの年齢制限…プロになるためには、公益財団法人日本棋院が行う棋士採用試験を受ける必要があり、23歳未満という年齢制限が設けられている
中国流…囲碁における布石手法のひとつ。星・小目・辺の星脇を組み合わせた配置
ベトナム流…右上空き隅、小目、相手の星へのカカリから星脇へのヒラキまでの一連の配置。中国流と位置関係が似ているために、このような呼称となっている
ヒカルの碁…週刊少年ジャンプにて連載されていた囲碁を題材にした漫画。小学生・中学生に囲碁を浸透させ、囲碁ブームを起こした。日本のみならず、数多くの国で翻訳され、人気を集めた
定石…ある局面で最善とされる一定の打ち方
大石…大きく繋がった一連の石のこと