SPECIAL TALK Vol.5

~囲碁の盤面には経営の縮図がある。リーダーを目指す方こそ、挑戦して欲しい~

囲碁の盤面では経営と同じことが起こる

金丸:私は3年前に囲碁を始めたのですが、囲碁に興味を抱いたのは、まさに経営と似ているからなんです。

万波:確かに、そうおっしゃる方は多いですね。具体的にはどのようなところに共通点をお感じになったのですか?

金丸:経営の世界は、お金も時間も人材も無制限にあるわけではありません。すべて制約条件があります。同じく囲碁も19×19という限られた条件のなかで陣地の取り合いをしなければなりません。それに自分がここを取りたいと思っても、相手によって流動的に局面が変わりますよね。経営の世界も常に外部の変化にさらされていて、たとえば、突如外資系企業が新製品を大々的に出してくることが起こるわけです。その動きを見て、あらゆる局面に対応しなければならない。つまり、相手ありきで、必ず全部を取れることはない、ということなんですね。

万波:おっしゃる通りです。囲碁の世界も、まさに同じだと思います。

金丸:経営でも、戦略を立て、野心と欲望で進んでいっても、途中で市場のシェアを取れそうにないことが分かったら、早期撤退しないといけません。その判断が遅れると傷が深くなります。囲碁でたとえれば、失う石が多くなって、相手方にダブルで加算されてしまう。撤退も早いに越したことはないのです。その一方、先ほどの万波さんの話のように、対局の途中で諦めたくなったときでも、諦めてはいけないという、この攻めと守りの組み合わせとが、経営と通じる部分なのだと思います。判断には、局地戦と大局感の双方が必要になる。自分がリーダーになったときと同じことが、まさに盤面で起きるのです。経営に関する言葉にも、囲碁からきているものが多いことに驚きます。

万波:「布石を打つ」や「捨て石」、「駄目」という言葉は、囲碁からきていますよね。

金丸:確かに偶然だとは思えません。囲碁の戦いは、業界内のシェア争いのようなものです。100のシェアを取れるかというと難しい。過半数の51を取ったら勝者になれますが、そうもいきません。2社の戦いであれば、過半数を取りにいく勝負ですが、現実の世界では、競合が10社も20社もいるわけですから。さらに、過去の成功体験を学んで、今に活かしていく点も似ていますね。囲碁の場合、先人達が研究し尽くしてきた結果として、こういう打ち方をすれば石を取れるというセオリーが、ある程度決まっています。

万波:過去に学びながらも、現状において戦略がどんどん変わっていく。これは、非常に囲碁と経営が似ている部分なのかもしれませんね。

金丸:実際、囲碁でも次々にイノベーションが起きていますよね。スピード重視の布石を特徴とする中国流(※)とかありますね。

万波:今は中国流に変化をつけて、より柔軟性の高いベトナム流(※)とかもありますからね。以前はこれが絶対に正しかったというものが、どんどん進化していっています。

金丸:だから定石だけではなく、攻め方と守り方の両方において、常に進化を続けなければなりません。そういった意味でも、リーダーを目指す人にはぜひ囲碁をやっていただきたいですね。

万波:そう言っていただけると非常に頼もしいです。囲碁は今、世界にも広がりつつありますからね。

金丸:囲碁というと、東アジアで盛んなイメージが強いのですが、いま世界でどれくらい広まっているのでしょうか?

万波:中国や韓国では、かなり盛んに行われています。全世界では60ヵ国ほどに広まっていると聞いています。たとえば、フランスは非常に囲碁が盛んですし、強いんですよ。

金丸:フランスが強いというのは、意外ですね。囲碁のどういった点が受け入れられているのですか?

万波:囲碁をすると、戦略的な思考を身につけられるようになる点が注目されているようです。また、漫画「ヒカルの碁」(※)の人気もあり、囲碁を始める子どもが増えているようです。日本の囲碁協会も海外への普及活動を積極的に進めているので、私も今年こそは英語を勉強して、海外の方に囲碁を教えたいと思っています。

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