代理店女子マリア Vol.5

代理店女子マリア:代理店超頻出単語「仁義」、仕事も恋も全ては仁義!

広告代理店にはびこる、「チャラい」「遊び人」のイメージ。

広告代理店勤務の正社員女子たちにとって、代理店への先入観はレッテル以外のなにものでもない。

港区の大手広告代理店で、営業として働くマリア、29歳、彼氏なし。

職場の同期である柳沢に紹介されたアベレージ男・阿部とのデートが順調に進む中、想いを寄せる仮氏・ケイからの突然の誘いに、柳沢たちとの打ち上げを急遽キャンセルして向かったマリア。翌朝の会社では、ドタキャンされた張本人の柳沢が待ち構えていた。

朝帰りからの出社は、気まずさしかない


「男と会うなら、そう素直に言えよ」

こっそりデスクに座ると、隣に座る同期・柳沢から早速ツッコミが入った。昨夜の打ち上げをドタキャンして会社に戻るとウソをついたが、同期の厳しい目は欺けなかったようだ。

朝、ケイの家で目覚めたマリア。時計は既に8時半を回っており、甘い会話を楽しむ余裕など全く残っていなかった。

寝ぼけたケイを置いて大急ぎで家を飛び出すと、近くのコンビニでインナーのシャツを買い、着替えて出社したのだが、柳沢にはまんまと朝帰りを見抜かれてしまったようだ。

「ごめんごめん、今度ビール奢る!」

柳沢に平謝りを済ませ、デスクに向かい仕事を始めると、部長に呼ばれた。

「ちょっといいか」

まさか部長にも朝帰りがバレたのかと、一瞬ひやりとする。

離婚調停中の帰宅難民、家出部長・小出


「お前の今月の残業時間、俺と肩並べるってどうなってんだよ」

マリアが所属する営業部の部長・小出は、今離婚調停の真只中だった。家に居づらいという理由で最近は会社に住み着くように働いていて、残業時間は部の中でも毎月トップ、部員たちは陰で「家出部長」と呼んでいた。

家出部長の奥様は、元々同じ会社の社員だったと聞いた事がある。遊び疲れた代理店男子が、仕事への理解を求めて代理店女子と社内結婚するケースも少なくないが、離婚率も驚くほどに高い。

寿退社をせずに会社にいたら、今頃部長クラスだったのだろうか。幸せな家庭を願って会社を去った奥様を思うと、同じ会社で働く女性として、マリアも人ごとでは片付けられない。

我に返り、自分の今月の働きぶりを思い返す。知らぬ間に家出部長と残業時間を競っていたとは、ひとりでに溜まったタクシーレシートの束も納得だった。

変わる代理店の給与体制。もう、残業代では稼げない


広告代理店の給料の高さは、残業代が全てを支えている。働けば働くだけ上乗せされる青天井の残業代で、一般企業に勤めながらもサラリーマンの平均年収を超える給料を約束されていたのだ。

しかし最近では、多くの広告代理店が、労働環境の改善という大義名分のもと人件費削減に励んでいる。残業が多い者には暗にサービス残業を促し、終電に乗り遅れた日のタクシー代も、申請しづらい雰囲気が社内に漂う。

マリアの今日の呼び出しも、これ以上の残業は認めないという部長からの静かな警告だった。

「そんなに働きすぎても、残業代もタクシーチケットももらえないご時世だからな。ま、ほどほどにしろよ」

※タクシーチケット・・・タクシー代を払わずともどこまでもタクシーに乗ることができる、通称「魔法のチケット」らしい。バブルを経験した代理店の先輩と話すと必ず出てくるが、マリア世代は見た事がない者がほとんど。

頑張って働いても報われないご時世、マリアは部長の話に気のない返事で答えた。

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