期待しない余裕が、思わぬ幸運を呼び寄せる!?
「久しぶりです~」
「久しぶり!ごめんね亜希子さん、急に誘っちゃって」
さらに一週間後、康介はみたび六本木ヒルズに降り立った。
京香、梨華との惨敗に終わったディナーを経て、康介は気付いたのである。
それは、“親しい女性よりも、あまり親しくない女性の方がよいのではないか”という事である。
このハンバーガーディナーは、女性が本音をさらけ出す、魔法のディナーである。
ところが、普段から親しい女性は、康介の勝手な妄想で良いイメージが出来上がっているため、本音が負の驚きとなって、イメージが崩れていくのである。
であれば、あまり性格を知らない女性を誘ったらどうだろう、ということで声をかけたのが亜希子である。
亜希子は2カ月ほど前に食事会で皆と一緒に連絡先を交換したが、清楚なルックスと、ウィットに富んだ会話で、「正直レベルが釣り合わないな」と諦めていた女性である。年齢は確か康介と同い年、仕事はITメディアのプロデューサーだったと記憶している。
今日、康介がチョイスしたのはブラッセリー ル デュック。パリのブラッスリーをイメージした店は、手前の立飲みスタイルの雰囲気とはうってかわって、奥のダイニングスペースはデート仕様になっている。
「うわー、雰囲気良くて嬉しい!」
「亜希子さんなんて、毎日素敵なところでしか食事しないんじゃないですか?」
「全然!毎日夜はコンビニとかばっかりだもん!」
-意外である!
「お肉、とか大丈夫です?」
「何、大丈夫って?お肉大好きよ」
「なんかサラダボウルとかばっかり食べてるのかなって(笑)」
「そんなんじゃ体がもたないわよ(笑)。」
(-これはひょっとすると、大正解だったのでは…!?)