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  • 夏ヒルズ物語:本音を引き出す魔法の六本木ディナーで恋を成就せよ!

    東京の夏。大人の恋を成就させるため、どの店に行くかは大問題である。
    これは、PR会社に勤務し、六本木でデートを重ねる松田康介の奮闘記である。


    問題。「仕事関係者(異性)とのディナーはどこへ行くべき?」


    腕時計の針は19時ちょうどを指している。

    (-19時20分の回にするか、21時25分の回にするか…)

    TOHOシネマズ 六本木ヒルズの上映時間表を見ながら、康介は昼を食べ損ねた腹の具合と相談していた。


    松田康介、28歳、彼女いない歴半年。中目黒のPR会社に勤務し、主にエンターテイメント業界の宣伝担当をしている。
    今日は映画制作会社クライアントの新作が公開される日である。関係者との会話のネタとして、初日に見ない訳にはいかないのだ。

    (-さすがに映画の前に何か腹にいれたいな…でも21時過ぎの回ってのも随分先だし…)

    すると、康介の後ろから聞き覚えのある女性の声がする。

    「松田君!」

    「あ、京子さん!先日は遅くまでお付き合いいただいて、ありがとうございました!」


    デザイン会社でマネージメントをしている中島京子だ。康介が担当するPR案件の資材を、京子の会社で形にしてもらうのである。これまで、仕事で4~5回は同じ案件を手掛けている。

    京子は確か松田より1歳年上のはずである。徹夜も当たり前のデザイン業界で、いつもスーツを着こなしている京子は、この暑さでも凛とした姿勢を崩さない。

    「今日クライアントの映画公開日だから、見とかないとな、と思って。今度うちの会社でも次の作品の…」

    なんとなく寂しく思われるのが嫌で、多弁になる康介。

    「私はうちが作ったパンフレットのチェック。実際販売されてる現場を見てみないと、本当に良かったか、わからなくってね」
    (-そういえば、京子さんと仕事以外で会うの、初めてだな…)

    「京子さん、僕21時の回を見ようと思ってるんですけど、時間余っちゃって。よかったら食事しません?」
    「いいよ、全然」
    本当に理由があれば、男は堂々とできるものである。

    「食べたいものあります?」
    「任せるわ。とりあえず暑いからどっかはいっちゃおうよ」

    「京子さんってお酒飲みますよね」
    「シャンパンまみれよ、夏は(笑)」

    ここで康介に難問が立ちはだかった。
    いきなり仕事相手とムーディーな店でシャンパンというのは、ドン引かれる可能性がある。
    だが京子は、明らかにお洒落女子。ジョッキ親父に囲まれる居酒屋に連れて行くのは避けたい。

    さもアテがあるように歩く康介の目に、ある看板が目に入った。

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