学歴カレンダー Vol.14

学歴カレンダー:夏目漱石のあの台詞から始まった、早稲田出身の文学青年との儚く散った恋

神奈川県の公立高校から、慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、丸の内の大手人材会社に勤める絵理奈(29)。周りの友人たちは“恋愛対象になるのは最低でも早慶レベル"と口を揃え、様々な学歴の男とのデートを試みる。

様々な大学出身の男性とデートしてきた。最近では、42歳の「元」慶應ボーイ・芹沢やコスパ重視の一橋卒・淳一郎との恋にも破れた。その後同志社卒の裕太と出会う。しかし、彼が想いを寄せるのは絵理奈の親友・美和子だった。

絵理奈はそんな裕太との中途半端な関係を清算し、学習院卒の亮介と意気投合したが、彼の煮え切らない態度にしびれを切らしてしまう。そして、ついに運命の相手に出会ったと思った絵理奈だったが……?


29歳。結婚して落ち着くか、1人の時間を謳歌し始めるかの分岐点


何度かデートした学習院卒の亮介との関係が終わってから、また1人で過ごす週末が始まった。ステディの相手がいた時には考えられないことだったが、今は1人の方が楽しいと思うほどにその時間が充実していた。

週末は早起きをして朝食を食べに出かけることにはまっていた。代々木公園近くの『365日』や芝公園にある『ル・パン・コティディアン』など、美味しいパン屋を探し朝から贅沢な気分を味わった。

29歳という歳のせいだろう。周りの女友だちを見ても出会いを求めて夜の街に繰り出すようなことはほとんどいない。結婚して落ち着いているか、自分のように1人の時間を謳歌しているか、どちらかだ。

しかし、きちんと自活できるだけの経済力を持ち、独身生活を謳歌しているこの生活も嫌いではなかった。無理して彼氏を作ってこの生活を壊したくない。

そんな風に思い始めていた頃、久しぶりに身を焦がすくらいの恋愛をした。

1人で過ごす週末に慣れ始めたときに出会った、早稲田卒の文学青年


彼の名は春馬、早稲田の第一文学部卒の29歳。大手出版社で書籍の編集者をしているという。出会いは、久しぶりに行った美和子主催の食事会だった。幹事に急かされたのか、遅れた彼は少し息を切らしながらやってきた。

背は165センチくらい、細身の体に黒縁メガネ。急いできたせいか、髪はボサボサだった。Tシャツにジーパン、背中にリュックサックを背負っていた彼は、スーツをビシッと着ている男性陣の中で明らかに浮いていた。

「仕事でトラブちゃって。」

絵理奈の横に座った瞬間、彼独特の香りがふわりと匂い立った。思わず彼の顔に鼻を近づけそうになって、慌てて口元に手を当ててごまかした。

今思い返すと、あの瞬間から恋に落ちていたのだろう。

その後、夢中になって彼の話に耳を傾けた。出版社で働く彼の話は今まで読んだ本や、今担当している作家の話がほとんどだった。

今ではあまり読まなくなってしまったが、絵理奈も大学時代、熱心に本を読んでいた時期があった。太宰治や三島由紀夫、夏目漱石など昔の作家の作品も、当時の若いエネルギーを使って読み漁った。

19歳から20歳という一気に世界が広がった多感な時期に、自分では表現できない感情を言葉にしてくれる「本」という存在が何より自分の支えになっていた。

そんな話をすると彼はとても嬉しそうな顔をした。

「その気持ち、すごく良く分かるよ。物語は人を救うからね。」

笑いながらそう言った瞬間、心は彼への気持ちでいっぱいだった。

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