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  • 100kmのフレンチフルコース Vol.2

    これぞ究極のデート!?出会って間もない男女が恋に落ちた100kmのフレンチフルコース(後編)


    「雨が降っていても赤いクルマに乗っていると気分が華やかになるね」

    真っ赤なルノーは阿佐ヶ谷を出ると環七を抜けて渋谷に向かっていく。早く家路につきたいのか強引に割り込むドライバーも多いなか、淳さんは他車に道を譲る余裕もあって、そういうところが素敵だなと秘かに思った。

    環七から井の頭通りに出て、私たちは互いの異性に対してのNGポイントなどを話したりしていた。

    例えば私の場合は
    ・ 食べるときにクチャクチャ音をたてる
    ・ 上から目線
    ・ 喫煙するひと(できれば喫煙しないひとがいい)

    淳さんは
    ・ 立つときに座っていた椅子を元に戻さない
    ・ 電車や店で出る人よりも先に入ってしまう
    ・ 髪の毛ばかり触っている

    などといくつか話していて、互いにひとつも当てはまることがないことを確認した。さすがに30歳を過ぎると性格や習慣をなおすのは難しいし、相手だって嫌でも指摘しづらい。

    そうこうするうちに今回最後のレストラン『モノリス』に着いた。距離を走るごとに次の店に着くまでの時間を短く感じていた。

    渋谷2丁目は、美味しいお店が多いから私の好きなエリアでもある。いわゆる渋谷の中心街と違って、年齢層が高いのもいい。

    「僕も渋谷2丁目が好きで昔からよく行くんだけど、モノリスみたいなお店って、ありそうでなかったんだ。実は店ができる時から気になってて、もしかしたら新しいフレンチかなって思ってたら、ビンゴ!しかも、好きだった名店の料理長の店だって知って、嬉しかったな」

    淳さんの話はただのグルメ話じゃなくて、そのときの本人の様子を想像させるものだから聞いていて楽しい。

    『モノリス』は、店の前は以前通ったことがあるけれど、外からは中の様子が分からなかったから今回訪問できることが夢のようだった。それも、実力派フレンチの店でデザートだけ食べるなんて、なかなかできる経験じゃない。それだけで心躍る思いだ。


    店の中に入ってみると、今回の4店のなかでも一番シック。黒を基調とした店内は、デートコースの最終地点にふさわしい高揚感を誘った。

    そして例によって、淳さんがオーダーがお店のスタッフに合図を送ると、しばらくして出てきたのは、おとぎ話のようなデザートのスペシャルセットだった……!!

    【デザート】『モノリス』フロマージュ・ブランのムースを詰めたベリーのクレープ


    メインは、溢れるばかりにベリーが敷き詰められたクレープ。そして、その横には3種のマカロンやシュークリーム、フルーツケーキなどのデセールワゴンが!

    「きゃ〜!!」

    盛りだくさんのスイーツに目が自然とハートマークになる。
    私は、早速iPhoneでデザートの写真を撮り、Facebookに“天国です♥”とアップした。すると瞬く間に女友達10人が速攻いいねを押してきた。


    「このクレープ、すごく美味しいね! あ〜、幸せ♡」

    「よかった、最後でこんなに喜んでもらえて」

    「100kmのフレンチフルコースここに完結!だね。私、感激しちゃった。 本当にこんなデート初めてだよ」

    私がこう言うと、淳さんは優しい笑顔のまま、でもちょっぴり緊張したふうにこう言った。

    「あのさ、よかったらもう少しドライブにつき合ってくれないかな…? もう少し話がしたいなと思って……」

    「もちろん、いいよ」

    もう少し一緒にいられると聞いて、私は心の中で喜びを感じながら、その嬉しさを淳さんに感じとられないよう気を付けて返事をした。淳さんは私をどこに連れて行こうとしているのかな……。
    でも、正直行先はどこでもよかった。私は、その後の展開に想いを馳せつつ、自分の中の秘かな計画の実行を胸に決めていた。

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