これぞ究極のデート！？出会って間もない男女が恋に落ちた100kmのフレンチフルコース（後編）

渋谷をでたクルマは東京タワーの近くを通って、芝浦ふ頭を抜け、レインボーブリッジにさしかかった。

「うわー。夜のレインボーブリッジって綺麗だね～。なんだか、ドラマみたい！」

「昔、大学の先輩がお台場に連れてきてくれたときに初めてレインボーブリッジを通って、東京に来たって実感したな。ここを通るといまでもその時のことを思い出すよ」

そんな会話をしながら、淳さんはお台場にあるパーキングでクルマをとめ、ドアを開けて私をエスコートしてくれた。

そこには、東京タワーにスカイツリー、六本木ヒルズや汐留のビル群など、東京のすべてを見渡す絶景。
初夏の海風も気持ちよくて、私は深呼吸をした。

淳さんもまた、一息ついたかと思うと、

「今日は一日つき合ってくれてありがとう。100kmのフレンチフルコース、リエちゃんと一緒だったからとても楽しかったよ」

と私の目を見つめてそう言った。

「私も……。あのね、淳さん……」

肉料理のレストランの後、雨のなかを淳さんのジャケットをかぶって一緒に走ったあたりから心に決めていた。夜の冷たい空気をひと息吸い込むと、私は一気にその言葉を告げた。

「私とつき合ってくれませんか？ 私、淳さんのことが好きです」

すると淳さんは、目を丸くして驚いていたけれど、くすっと笑うと、

「あ〜、いま僕が言おうとしたことを先に言われてしまった（笑）…もちろん、答えはYES。僕もリエちゃんのことが好きだよ」

と言った。

「最初は淳さんから言われることを期待してたんだけど、でも今日があまりにも楽しかったから、自分から言いたくなっちゃったの。ごめんね（笑）」

「そういうところがリエちゃんらしくて、かわいいなって思うよ」

淳さんはそっと私をひきよせた。

淳さんの唇がやさしく重なる。

告白というと、女性の場合、待っている方が普通かもしれないけれど、“100kmのフレンチフルコース”という奇跡のような経験をし、淳さんの優しい愛情を感じる中で、私は自分から行動を起こしたくなった。そして、きちんと自分の想いを伝えられてよかった。

「ねえねえ、せっかくだから、俺からも言わせてくれないかな？」

「どうぞ」

「僕の彼女として、またドライブに一緒に行ってくれませんか？」

「喜んで。また私を助手席に乗せてください」

100kmのフレンチフルコースはいったん終わったけれど、1000kmでも１万kmでも、この真っ赤なルノーで淳さんと色んな道を走りたいと思った。一緒にドライブした距離のぶんだけ、絆を深めていきたい。

「じゃあ、101kmからまた始めよう」

「はい、よろしくお願いします！」

そう話してクルマに戻り助手席に座ると、さっきよりも淳さんを近くに感じる気がした。そういえば、淳さんがこのルーテシアって車はLOVEがテーマだと言っていたけれど、今はそれがすごくわかる気がした。淳さんは一瞬、私の頬に軽く手をふれ、ハンドルを握ると、また優しくクルマを走らせ始めた。

【完】

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