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  • 新米弁護士 倉木麻美 Vol.1

    新米弁護士 倉木麻美:憧れの世界に飛び込んだアラサー女子が直面した試練とは?

    ここ東京には仕事を生きがいにし、キャリアップし続ける女性が沢山いる。今回の物語の主人公は、有名国立大学を卒業し、大手飲料メーカーに就職したが、そのたぐいまれなる向上心の高さがゆえに、弁護士を目指し、それを現実のものにした32歳・独身の倉木麻美。

    男性主導の法曹界に足を踏み入れた女性弁護士の光と影を描く、ラブ&サクセスストーリー。そして、激動の日々に時折訪れる“ちょっとした幸せな瞬間”に、麻美のそばにあるものとは?


    いつもオフィスではすっぴん。こんなはずじゃなかったのに……

    「最近、いつマスカラ塗ったかな?」

    トイレの鏡を前に自問自答するが、本気で思い出せない。弁護士になって3カ月が過ぎた。クライアントとのアポがない限り、すっぴん、洗い立ての無造作ヘアが基本スタイルだ。

    倉木麻美、32歳、彼氏あり。

    麻美は、27歳の時に勤めていた飲料メーカーの営業職を辞職。3年間法科大学院に通った後、ストレートで司法試験に合格した。京都での1年間の司法修習を経て、企業法務を扱う「渉外弁護士」になるべく、今年1月に大手法律事務所に入所したばかり。ここまでは怖いくらい、順風満帆だった。

    しかし、入所した麻美を待っていたのは、華やかな世界ではなく、リサーチと文書作成の毎日。

    麻美の主な仕事は、ボスであるパートナー弁護士宛てにきたメールの回答文(ドラフト)を作ること。そしてM&Aを検討するクライアントに提出する、買収先候補の経営実態をまとめたレポートを作成することだ。

    どちらも果てしなく地味で時間がかかるのだが、常に10件以上同時に作成している。おかげで終電で帰れればいいほうで、週に2回は事務所で朝を迎える。渉外弁護士の大舞台・契約交渉の場で履こうと買った「クリスチャン・ルブタン」の靴は、いまだ出番はない。所内でサンダルを履き回す日々だ。

    「吉見さんと仕事してるんですよね? ご愁傷様です!」

    事務所のトイレを出ると、同僚の弁護士が声をかけてきた。

    吉見は麻美のボスで、高圧的な態度と人使いが荒いことで有名だ。昨年離婚したばかりで、この世の春を謳歌中。「ちょっと用事があるから……」と打ち合わせを23時過ぎに設定するし、夜中の2時すぎに平気で電話してくる。

    頼まれた資料を徹夜で作っても「ありがとう」のひと言もない。デスクにお伺いを立てに行ってもパソコンのモニターから目を離さず、発する言葉は「そこに置いておいて」。というか、渡した資料を読んでいる気配がない。

    麻美が何より嫌なのは、吉見の口癖。

    「ロースクールで、習ってこなかったの?」
    「それで、よく司法試験パスしたなぁ」

    業務中、麻美が知らないことがあると、陰険さを全面に出しつつ嫌味を言ってくるのだ。

    所内では“補佐したくない弁護士ナンバー1”の吉見だが、大手企業を複数担当し、敏腕弁護士として活躍している。細かい法律も熟知していて、ドラフトを提出すると、毎回真っ赤になって戻ってくるが、指摘される内容は悲しいかな、ぐうの音も出ないほど、完璧なのである。

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