2016.04.12
新米弁護士 倉木麻美 Vol.2
(前回までのあらすじ)
32歳・独身の倉木麻美。有名国立大学卒業後、大手飲料メーカーに就職したが、その向上心の高さから弁護士を目指し、現実のものにした。憧れの大手法律事務所への就職も決まり、希望に満ち溢れていた麻美を待っていたのは、地味で膨大な量の仕事。
クライアントには弁護士扱いされず、上司・吉見にも叱責される日々だった。そんな地獄のような毎日を支えてくれるのは、恋人の純也。麻美にとって、彼だけが心の拠りどころだったはずなのだが……。
第1話: 憧れの世界に飛び込んだアラサー女子が直面した試練とは? ここ東京には仕事を生きがいにし、キャリアアップし続ける女性がたくさんいる。このお話は、男性主導の法曹界に足を踏み入れた、女性弁護士の光と陰を描く、ラブ&サクセスストーリー。
キャリア女子にとって、同業の男友達は「三種の神器」のひとつ!?
―――今晩、何時頃になりそう?――――
純也からのLINEのメッセージを見て、思わずため息をついてしまった。
毎週金曜日の夜に、純也の家に泊まりに行く約束になっている。本来なら待ち遠しくてたまらないのだが、今週は、レポートの締切が3件重なっていた。いずれも、M&Aを検討する企業に提出するもの。合併先候補の経営実態をまとめるのだが、とにかくヘビーで時間がかかって仕方がない。
おかげで毎日、白々と空けた朝に事務所を出ていた。出社は10時と遅めだが、ここ数日まとまった睡眠がとれていない。正直なところ、今夜は色気より眠気。最近購入したお気に入りの、高級なマットレスに包まれて、泥のように眠りたい……。
―――ごめん。明日朝から仕事が入っちゃったから、今日は行けない―――
慣れた手つきで、断りのメッセージを送る。今週は、クライアントの合併先候補に挙がっているホテルを極秘で視察に行くという「設定」にした。本来新人が行うべき仕事ではないが、弁護士ではないし、真偽なんて分かるまい。
純也からの「無理しないように頑張って!」というメッセージを受けとり、罪悪感にかられながらも黙々と仕事をしていると、またメールが届いた。今度は雄介からだ。
―――今晩、どうよ?―――
雄介は、司法修習時代の同期だ。麻美とは別の事務所だが、彼も大手法律事務所に所属している。事務所が同じ赤坂ということもあり、こうして気まぐれに連絡を取り合っては、夜な夜な飲みに行っている。
ふたりとも渉外弁護士を志し、同じ規模の事務所に入り、抱えている仕事内容も、悩みも、生活スタイルも同じ。共有している部分があまりに多く、麻美にとって雄介は最高の「愚痴り相手」なのだ。純也に愚痴ると、その都度、業務内容や業界のルールから説明しないといけず、メインテーマに辿り着く前に、息絶えてしまうことも多い。
「どうしようかな……。」
純也とのデートを断った手前、行くべきではないと思ったが、吉見の横柄な態度をどーーしても愚痴りたかったし、先日の“突然のツンデレOK”事件も報告しなければいけなかった。それにどのみち、夕食はひとりで家の近くで食べようと思っていたし……。よし、さくっと食べて、愚痴を話して、スッキリとした気分で眠りにつこう。
―――24時過ぎ、上原でいい? お肉が食べたい!―――
そう返信した。久しぶりにまともな食事がとれるからか、雄介に吉見の愚痴を聞いてもらえる嬉しさなのか。どこか浮き足立つような、ふわりとした気持ちを抑えて、再びパソコンに向かう。キャリア女子にとって聞き上手な同業の男友達は、パソコン、携帯とならぶ「三種の神器」にきっと入るだろう。
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