2016.04.05
新米弁護士 倉木麻美 Vol.1麻美を苦しめているのは、吉見と地味で膨大な仕事だけではない。
クライアントとの面会に同行することもあるのだが、その際の対応にも辟易する。
先輩弁護士たちが名刺交換をはじめ、順番を持っていると、明らかに先輩方との名刺交換との態度の違いを感じる。おそらく、秘書かアシスタントだと思われているのだろう。名刺を一瞥して、明らかに驚く人もいたほどだ。そんなに弁護士っぽくないか、私は……。
終いには、「弁護士をしています」と伝えているにも関わらず、法務担当者に「ねえちゃん」と呼ばれることもあった。そういう時、麻美は「倉木先生と敬いなさい!(泣)」と、心の中で唾を吐く。
希望を持って開けた扉は、思いのほか地獄だった。
メーカー時代の同期が掴んでいった「女の幸せ」。つまり結婚や出産をしていった20歳代後半。麻美はそれに目もくれず、すべての時間を勉強に捧げた。1日18時間以上、机に向かっていた。上昇志向だった。
女だからと仕事と適当に付き合う女性がどうしても好きになれなかったし、私は誰よりも有能で、誰よりも稼ぐ能力があると思っていた。
弁護士バッチが手に入れば、華やかな世界が待っていて「女の幸せ」以上の幸せが手に入ると思っていた。その幸せは私の人生の全ての同級生の中でぶっちぎりナンバー1な幸せのはずだった。
……しかし、目の前の現実はどうだろう? 徹夜で、資料作成に追われる日々。コピー機だけが親友だ。気がつけば、17連勤。おかげで、あごまわりにニキビが増えた。不規則な生活で体重も少し増えた。
そんな辛い日々を支えてくれているのは、恋人の純也だ。
同い年の純也は、飲料メーカー時代の同期で、弁護士を目指す麻美を献身的に支えてくれていた。就職してからは、金曜日の夜に彼の家に泊まるのが恒例になっていた。
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