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  • シンガポール・ラブストーリー Vol.1

    シンガポール・ラブストーリー:34歳・失恋女、傷心のひとり旅で思わぬ恋の予感

    時刻は17時。今日はずっと広々とした場所にいたい気分なので、テレビでもよく見たことがある巨大な植物園『ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ』にも行こうと決めた。100万㎡もある広大な敷地内を散歩していると、iPhoneのGmailのアイコンに新着メール“1”が浮かんだ。

    『ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ』
    園内にある巨大ガラスドームの温室“クラウド・フォレスト”で、まず目に飛び込んでくるのが、この高さ35mの人工の山。そして、その温室を外に出れば、圧巻ともいえる18本の巨大なスーパーツリーが。スーパーツリーによる光のショー“OCBCガーデン・ラプソディ”は毎日19:45〜、20:45〜に行われる

    ________________________
    小西さま

    ご連絡ありがとうございます!
    『PS.cafe』に行かれたんですね。
    あそこは僕もお気に入りで、緑が気持ちいいところですよね。

    そうそう、チリクラブはひとりじゃいけませんよね。
    せっかくシンガポールに来たのにそれは緊急事態だ(笑)。
    ぜひ一緒に行きましょう!
    突然なんですけど、今晩はどうですか?
    もしOKだったら20:30に
    『パームビーチ・シーフード』を予約します。

    LINEのIDと携帯番号もお伝えしておきますね。
    XX66XXX
    090-xxxx-xxxx

    梨花さんのシンガポール滞在が楽しいものになるよう
    僕もお手伝いできれば嬉しいです。

    佐野 誠
    ________________________

    過不足なく丁寧な文面で好感がもてた。ホーカーで会釈したとき、一瞬だったけれど、その人、佐野 誠の目は優しそうだった。チリクラブが食べられるという嬉しさと、ディナーの相手ができた意外な展開に心が弾んできた。

    植物園内の巨大なスーパーツリーのふもとにある芝生に腰をおろし、OKの返事をLINEで出す。寝転び空を見上げると、シンガポールの空が青紫に染まっていくところだった。スーパーツリーは鮮やかにライトアップされ、まるで『アバター』の世界だなと思った。その後、音楽に合わせツリーの光が変化していく幻想的なショーが始まった。映画の世界に紛れ込んだようだけれど、この美しさは現実だ。そして、健二さんが私に気がないのも現実なのだ。

    受け止める気持ちになったら、昨日までのただ待ちわびていた日々が、少し昔のことに思えてきた。携帯ばかり気にする生活はもう終わった。日本に帰ったら、冷蔵庫の中のチョコレートは自分で食べてしまおう。今晩はリッチにチリクラブで“決起会”だ!

    立ち上がって、お尻についた芝生をふり払う。

    佐野 誠との待ち合わせの時間まで、あと30分となっていた。

    【第一話完】

    次回予告(3月7日公開予定)
    突然、出会ってしまったイケメン商社マン、佐野 誠とチリクラブデート。失恋したての34歳のオンナにとって、シンガポール・バカンスは絶好の切り替えの場となるのか?そして二軒目のバーで予想だにしないことが梨花に伝えられる!?

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