崖っぷちアラサー奮闘記 written by 内埜さくら Vol.1

崖っぷちアラサー奮闘記:芸能界から捨てられた女の「これが私の生きる道」

 わたしが女優をしていたことを、世間の人たちはどのぐらい覚えているのだろうか――。

 職探しをするため自室のパソコンで求人サイトを検索していたらつい魔がさし、気づけば「芸能界から消えた女優」というまとめサイトをクリックしていた。そこにはかつての芸名、「高木雅」という名前とともに、自分の顔写真が小さく載っている。そして、写真の下にはこんなコメントが添えられていた。

(綺麗な女優さんだけど、最近見かけないよね)

 見かけなくなったのは当然だわ、と「高木雅」だった北岡涼子は心の中でつぶやいた。およそ1年前に引退して現在、涼子は東京でひっそりと一人暮らしをしているからだ。
 パソコンの画面を見つめながら涼子は、17歳でデビューして29歳で引退するまでの、足かけ12年間の女優生活を振り返った。

 高校1年生のころ、地元の静岡の同級生と渋谷109へ遊びに来たときにスカウトされ、芸能界に入った。最初の仕事はオーディションで勝ち取った、子供に大人気のアニメの実写版ドラマでのヒロイン役だった。

 業界最大手と名高い芸能事務所に所属していたおかげで涼子はその後、新人でありながら主役の刑事の娘役や銀行を舞台にした大がかりな連続ドラマを含め、いくつかの作品に起用され、ゴールデンタイムに放送された学園ドラマでは、いじめられるヒロインの親友という、これまでより画面に映る回数が多い役を獲得した。

 以後も何十本ものドラマや映画に出演したが、なぜか主演に抜擢されることはなく日々がすぎていく。そこで、「主演を張るだけが女優ではない」と意識を転換し、演技レッスンに通い、芝居をイチから習い直して脇役を究めようとした。時には主演を“食う”迫真の演技を見せ、話題になることもあった。

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