東カレ レストランオブザイヤー2015:新人賞は魚介フレンチ『アビス』

『東京カレンダー』では創刊15周年目にして初となる、「RESTAURANT OF THE YEAR2015」を開催!

2015年の食のトレンドを振り返りつつ、取材で培った編集部の独断と巷の声を統合し、今年もっとも輝いたレストランを3店舗決定。3日連続で発表する。1日目はカッテイング技術が他に類を見ない人気焼肉店を、2日目は“分子ガストロノミ”ーの分野の裾野を広げる実力店を紹介してきた。

そして最終日となる本日第3回目は、魚介類専門のフレンチレストラン『アビス』だ。

好きだからこそ引き出せる
魚介料理の本当の魅力『アビス』

「金目鯛と笠子をベストの火入れで」。手前は、山口県萩から直送のカサゴ。プリプリとした食感が小気味好い。奥は伊豆産の金目鯛。脂ののってきた金目鯛は2kg サイズのものを骨を付けたまま9 日間ほど熟成させている。皮はパリっと、身はしっとり焼き上がるのが、目黒シェフ流の焼き方だ。ジロール茸と銀杏、グリーンオリーブのソースを添えている

目黒シェフがマルセイユで修行をしたレストランは、魚介料理だけで三ツ星をとった店だったという。しかし魚の扱いについては日本の方が優れた技術を持っていると感じていた氏の中に、いつしかある決意が芽生える。

「誰も成し遂げていない、技術も味も最高の魚介レストランを作ろう」

帰国後、『カンテサンス』で料理人としての技術をさらに研鑽し、満を持して念願の店を形にした。

『Abysse』には“深海”と“奥深きもの”という意味がある。オーナーシェフの目黒氏は、「深海のように静けさに満ちた空間で、海の幸の魅力を引き出した料理を提供したい」、「奥深い料理の世界を常に探求していきたい」という2つの想いから、この言葉を店名に選んだという。

瀟洒な白い扉を開ければ、モノトーンでまとめられた店内は仄暗く、ブルーからグレーのグラデーションに彩られた壁がその名の通り深海を彷彿とさせる『アビス』。今年の3月15日、あの『フロリレージュ』の跡地にオープンしたシーフードが主役のフランス料理店だ。

スタイリッシュな空間で頂く料理は、9,000円のおまかせコースのみ。アミューズに始まる全10皿の料理は、フォアグラの一皿をのぞいてほぼ魚介一色。その魚介類も、山口の萩や北海道、伊豆に五島列島などの漁港から直送。トレーサビリティのはっきりしたものを扱っている。

アミューズの「海藻のクッキー」と「カマスの炙り」、付け合わせは「ナスのキャビア風」

「魚介類は、まず種類が豊富で楽しいですね。同じ白身魚といっても、鯛やヒラメなどとハタやメヌケといった魚では身質が全く違ってくるし、ブリやスズキように成長していくにつれ、脂ののり具合が変わっていく魚もある。まさに千差万別。それによって火の入れ方も微妙に変えるわけで、ふたつとして同じものはない。そんな魚料理の奥深さ、そして季節感を表現できるところも大きな魅力ですね」。

溌剌とした笑顔でこう語るのは目黒浩太郎シェフ、30歳だ。

「帆立貝とフレッシュマッシュルームのカルパッチョタルト」。すだちの香りが爽やか

子供の頃から和食の料理人だった祖父の後ろ姿を見て育ち、いつしか料理への道を歩んでいた目黒シェフ。もともと魚好きな少年だったそうだが、魚介専門のフランス料理店の実現を本格的に決心したのは、フランスでの修業時代。マルセイユの三ツ星レストラン『ル・プチ・二ース』での経験が、彼を大きく魚介へとシフトさせた。

帰国後はこれまでの総仕上げの思いもあり『カンテサンス』へ。“なぜそうするのか”を常に念頭に置きつつ料理を考える岸田イズムが、目黒シェフの料理の骨格を形作っている。

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