いまや、とっておきの夜の選択肢としても重宝され圧倒的な人気を確立した“焼き鳥”。近年は鶏料理として発展し、想像をはるかに超える独創的なコースも登場。
最旬店とともに東京焼き鳥の華麗なる進化をお届けする。
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1.焼き鳥はここまで来た!神楽坂で繰り広げられるハイエンドな世界がある
『やきとり松明』@神楽坂
大人の街に漏れ出る色気は、もはや隠れ家バーに匹敵する
神楽坂の街を行き交う人々が、思わず足を止める。
光を抑えた空間でゆらめく炎は、洒脱なバーのような雰囲気を生み出しており、ここが焼き鳥店と想像する人はまずいないだろう。
北新地を魅了した熟成地鶏は、新次元の旨みをもたらす
大阪ではビブグルマンに選出された焼き鳥店を任された和田 亮さんが腕を振るう『やきとり松明』は、比内地鶏の焼き鳥をメインに、オリジナリティ溢れる一品料理をコースで愉しませる気鋭店だ。
鶏と並んでもうひとつ、この店の主役を張るのが火。薪、藁、炭の3つの熱源を駆使したコースで食べ手の心を引きつける。
大きな盆ざるに盛りつけられた食材のプレゼンテーションに始まり、一品料理が10種、焼き鳥は7種が登場するが、ひと皿、ひと串に込められた熱量が飛び抜けており、とくに比内地鶏が持つ弾力や力強い旨みを活かしきった焼きは圧巻。
ねぎまや抱き身、内臓類の火入れに思わず天を仰ぎ見る。
「鶏のかば焼き」。
シラーで煮込んだ鶏肉は甘じょっぱさの中に芳醇な旨みが感じられる。残ったタレには少量の白米を和えて。
関西から飛来した“火の鳥”として、ここで新たな伝説を刻むはずだ。
2.あの“裏鍈輝”の立役者が骨董通りの最上階で、新たな焼き鳥劇場を開幕する
『鳥めい』@南青山
煌びやかな骨董通り沿いの新築ビルに満を持して創業された『鳥めい』。
最上階の店に入ると、木と煉瓦を基調とした温かみのある雰囲気と鶏絵のギャップに出迎えられ期待値は上がる。
強面ながらチャーミングという店主に惹かれる常連が多いのも頷ける
店主の稲葉汰明さんは恵比寿『鍈輝』で7年も腕を磨き2番手として活躍した俊英だが、華麗な出自に甘えず、自らの焼き鳥を追求する姿勢を貫く。
出身者なら当然の福島県産伊達鶏のほか、老舗卸の新橋『加賀屋』から地鶏や銘柄鶏を仕入れ、状態に応じて使い分ける。
名門直伝の串のあとにはレバニラ!ウィットに富んだ料理は笑顔を引き出す
「串打ちや焼き方など基本は修業先と同じ」と断りつつ「せせり」は首肉の間に胸の皮を挟み込み皮のジューシー感と香ばしさを加える。
仕上げに橙酢で香りづけし、しつこさの軽減ももくろむ。
「つくね」は伊達鶏のほか7種類の地鶏や銘柄鶏を使用。
一品料理もそれは然りだ。
「名前と実際のギャップで驚かせたかった」と笑う「レバニラ」が象徴的で驚きは次々と。
こんなにすごいのに稲葉さん本人は屈託がなく、話し上手だから、早々に食感度の高い大人たちが押し寄せている。
3.荒木町に姿を現した白木のカウンターは、串とワインを愛でる玄人たちの特等席
『荒木町焼鳥 康 kou』@荒木町
自身を「呑むリエです」とお茶目に話すソムリエ・上野陽平さんがワインを選ぶ『荒木町焼鳥 康 kou』。
ナチュラルワインを主軸にそろえ、その理由を「強すぎず、焼き鳥の旨みに寄り添ってくれるから」と上野さんは話す。
店主の熊田康人さんが焼く鶏は、際立った旨みを含み、至極ジューシー。秘訣は水分を逃がさず、旨みを引き出す仕込みにある。水分量の多い「信玄どり」に塩を振って真空状態にし、0度で1〜2晩寝かせる。
熊田さんは元々和食の料理人。試行錯誤を経て魚を寝かせることを鶏に応用し、焼く前の仕事を緻密に行っている。
あらゆる鶏の美味を倍増させる一杯に唸る
「98WINEs」の甲州のあとにせせりを食べれば、鶏の旨みがぐっと引き出される。
「信玄どり」のせせり。血や筋の掃除まで細やかな仕事が光る。
「つくね」×「花ノ香 赤酒」
玉ねぎのバターソテーが入る京紅地鶏のつくねには熊本伝統の赤酒。
2種のサイズの挽肉で食感も楽しく、肉汁にコク深い甘さの赤酒が溶け合う。
「手羽先」×「スリー・クヴェヴリ・テラスズ サペラヴィ No.12」
手羽先の脂や皮の香ばしさに合わせるのは、ジョージアのオレンジワイン。
タンニン控えめで酸も程良く、かつコクもあり、手羽先の脂とのバランスが良い。
「レバー」×「98WINEs 芒 NOGI ROSE」
そんな大人の遊びのようなマリアージュのために、荒木町に向かってみては?
4.酒と肴と焼き鳥と。昭和の酒場スタイルは令和の大人にフィットする
『酒亭湯澤』@馬喰横山
畳みかける美味の連打は、日常の贅沢の最高峰
昭和の酒場は、焼き鳥も刺身も出す店がごく普通にあったが、いつの頃からか“分業”が進んだことも、日本の焼き鳥文化が成熟した理由なのだろう。
だが、今もそうした昔ながらのスタイルを貫いているのが、『酒亭湯澤』だ。
ここには、職人の火入れの技が光る焼き鳥を堪能しながら、丁寧に作られた一品料理を銘酒とともに味わう、贅沢この上ないコースにどっぷりと浸ることができる幸せがある。
店主の湯澤圭介さんは、焼き鳥と和食の2枚看板で食通を魅了する鐘ヶ淵の名店『酒亭田中』出身。
コースは¥8,800で、この日は、はまぐりを使った清らかな旨みに心まで温まるお椀をはじめ、「やま幸」のまぐろの手巻きといった料理が6〜7品、2種の地鶏を用いた焼き鳥が5串登場。
「刺身」。塩釜のまぐろはシャリとともに海苔で包んで。
季節の野菜「ヤングコーンと北海道産アスパラガス」の揚げ物も登場。
福島県産のマキシマムこいたまごを使用した、濃厚な味わいの「親子丼」。
「つくねキンカンチーズ」は、もも肉と胸肉、軟骨、たまねぎを合わせ、仕上げにグラナパダーノをたっぷりと。醤油漬けにしてからスモーキーな風味を纏わせたキンカンと、できればひと口で。
すべて「酒亭コース」(¥8,800)の一例。
仕入れも仕込みもひとりでこなし、一串入魂の思いを込めた焼き鳥にも一切の妥協がない。
名酒亭として、さらに飛躍する未来が見える。
5.鳥は銘柄で語る時代。成熟した大人たちは今、この店で鳥の違いを知る
『鳥おろし 天鳥(あとり)』@新橋
食べ応えある大ぶりの串に垣間見る、鶏肉の老舗卸の矜持
鬼に金棒とは、まさにこのことである。
焼き鳥店の根幹を支えるのは、第一に鶏肉の仕入れ。銘柄を限定する、しないに関わらず、鮮度と品質を備えた鶏肉を安定的に仕入れるのは容易ではない分、母体が老舗の鶏肉卸となれば、それだけで圧倒的な“武器”になるのだ。
新橋駅に程近い路地に、昨年オープンした『鳥おろし 天鳥』は、明治時代から鶏肉ひと筋の卸問屋が営む店という強みを活かし“違い”を楽しむ串をコースで供する。
大将の坂元あきひろさんは、卸業で培った目利きで自ら鶏肉を仕入れている。
焼き鳥店で働いた経験は、串打ちや焼きにしっかりと活かされており、部位や銘柄の違いを巧みに引き出す。
パーツごとに異なる鶏のレバーを使った串は、その真骨頂。それぞれの食感や風味を際立たせる焼き技に感嘆のため息がもれる。
ホロホロ鳥や合鴨、親鶏などを合わせただんごも圧巻。
「ちょうちん」は、甘みが強い比内地鶏と濃厚な親鶏のコンビ。
“違い”がわかる大人こそ訪れるべき一軒だ。
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