A2:まるで母親のようだから。
交際期間中、特に大きなケンカをすることもなく、穏やかな毎日が続いていた僕たち。
ただ徐々に、週末は家でダラダラとする時間が増えていく。
最初のうちは頑張って出かけていたけれど、本来の僕は家にいるのが好きだ。それを茜は何も言わずに許容してくれたので、なんとなく出かける機会が少なくなっていった。
それと同時に、僕は週末ゆっくりと寝る日が増えた。
しかし何も予定がない週末くらいはゆっくり寝たいのに、布団を剥がして起こしてくる茜。
「直也、何時まで寝てるの?もう10時だよ」
「え〜。今日、土曜なのに」
起こし方が、母親だ。
「朝ごはんは?食べるでしょ?」
「うーん。朝ごはんはいいや。いらない」
「え〜せっかく用意したのに」
「ごめん。後で食べるから、置いといて」
「いいよ、お昼は別で作るから」
会話が、もう親子のようだ。
こうなると、どんどん茜を女性として見られなくなっていく。それに茜はずっと家のことをやってくれるので、僕もそこにあぐらをかいていく。
言い方が本当に悪いのは承知だけれど、彼女ではなく、お手伝いさんのような、母親のような…。
何とも言えない存在になっていき、僕は茜に対して何かをしてあげたいという気持ちになれず、自分から動くことがなくなっていった。なぜなら、頑張る必要が何もないからだ。
「直也。今日の夜、近くでもいいからご飯に行かない?」
「いいよ。この前の焼き鳥屋さんでも行く?」
「うん!」
外食だってそうだ。茜が何でも作ってくれるので、僕は茜と一緒の時は無理して外食に行く理由はない。だから外食の頻度も必然的に落ちていく。
そして茜といる時くらいは休肝日にしたいので、仮に外で食べてもお酒も飲まないし、会話が大盛り上がりする訳でもないので、ご飯もサクサク終わる。
「よし、帰ろう。ご馳走さまでした」
― あれ?なんで一緒にいるんだっけ。
そう思い始めてしまった。
そしてそのタイミングで、僕からすると“頑張って追いかけたい”女性に出会ってしまった。
彼女とはまだ付き合ってもいないし、中々手に入らない。だから外資系ホテルに入る、超高級フレンチにも連れて行くし、久しぶりに自分がちゃんと努力しないといけないな…と再確認させられている存在だ。
何より、彼女はとても喜んでくれるし、ある程度放置してくれる。
そうなると対照的な茜のことを、もう好きとは思えなくなってしまった。いや、人としては好きだけれど、もう完全に異性としては見ることができない。
茜に対しては、本当に申し訳なく思っている。
色々とやってくれて、まだ同棲すらしていないのに、僕の家のことも全部やってくれるから。
でも逆に、そこまで全部されると、もう母親とか、あれこれ世話を焼いてくれる寮母さんのようにも思える。
女性はある程度ワガママでもいいと思うし、絶対にやり過ぎない方がいいと思う。
男の人を手のひらの上で転がすくらいが丁度いい。男性は、尽くされれば尽くされるほど調子に乗って、感謝も薄まっていってしまうから…。
そして一度失ったトキメキとか憧れを取り戻すことは相当難しく、僕は茜と別れることを決めた。
▶【Q】はこちら:彼のポケットにあった「2人分の高級ディナー」のレシート。スルー?それとも聞く?
▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟
▶NEXT:1月24日 土曜更新予定
結婚前に見ておくべきだった男の性格は?







この記事へのコメント
お母さんにしか思えないとか、直也が付き合う価値ない男(オカンとバカ息子って書いた人御名答)、あと「後片付け含めて料理だからね」ってやっぱりウザいね。