A1:自分の主張があって、かっこいいなと思った。
茜と出会ったのは、知人のホムパの会場だった。「良い出会いがあるかな」くらいのノリで参加した僕の隣に、たまたまいた茜。
ホムパでは少し話した程度だったけれど、飲み足りなかった僕は茜を誘い、二人で2軒目へ行くことになった。
しかしこの2軒目で、僕は茜に対して非常に興味を湧くことになる。
「茜ちゃんって、何をやっている人なの?」
「私はフリーで、フードコーディネーターをやってるよ」
「フードコーディネーター?」
「簡単に言うと、雑誌とかテレビとか…撮影の時に、食べ物を綺麗に見せたりする仕事」
「へぇ、そんな仕事があるんだ」
綺麗な黒髪のロングヘアに、意志の強そうな瞳。綺麗な子だなとは思っていたけれど、話してみると仕事に対してもまっすぐで、そして芯があった。
「私の仕事って、同じシーンが二度とないから本当に楽しいんだよね。それが世に出て、形になる瞬間がたまらなく好きで。その分不安定だけど、そんなジェットコースターみたいな感じが意外に嫌いじゃなくて」
「茜ちゃんって、面白いね。個性的というか、他の子と違うというか。そこが、すっごく魅力的だと思う」
そしてこの日をキッカケに何度か二人で食事へ行くようになり、気がつけば一緒にいることが多くなって、交際していた僕たち。
交際を始めるにあたり特別な言葉はなかったけれど、それが逆に僕たちらしくて良かった。
ただもちろん、実際に交際することになり、彼氏彼女の関係になると色々と気持ちの変化も出てくる。
お互いの家に行き来するようになったのだけれど、僕は早々に、茜から出鼻を挫かれることになる。
それは、「茜が喜んでくれるといいな」と思って料理をした日のことだった。茜は料理が上手だから、普段は彼女がご飯を作ってくれている。
でもたまには僕もお返しをしたいと思い、材料を買い出しに行き、下手なりに一生懸命頑張って作ったことがあった。
しかし茜は、僕の料理を見るなり…いや、料理を見る前に早速小言を言ってきた。
「直也、ご飯を作ってくれるのは有り難いけど…その前に、キッチンを綺麗にしてくれない?後片付けまでを含めて、料理だからね」
― それが先?
小さいかもしれないけれど、意外にショックだった。
片付けをしていなかったことは僕が悪いけれど、最初にまず「ありがとう」とか言うべきことはあるはずだ。
作った料理が、見る見るショボく見えていく。それと同時に、僕の心も一気に萎えた。
― 作ってもこんなふうに言われるなら、もういいや。
「あー…。俺、片付け苦手なんだよね」
「そうなんだ…」
何かしても、喜んでくれない彼女…。
この日以来、僕は茜に対して“何かしてあげたい”気持ちが湧きづらくなった。
しかしこれだけが原因ではない。
掃除や料理、すべてやってくれる茜。茜はテキパキと全部こなしてくれるので、僕は何もする必要がない。
「茜、今日のご飯何?」
「今日は、直也の好きなハンバーグにしようかなと思って」
「マジ?嬉しい!」
色々と率先して家事をしてくれるのは本当に感謝もしているし嬉しい。けれども、むしろ茜はやり過ぎ感があった。
「直也、食器だけダイニングテーブルに運んでもらっていい?」
「は〜い」
「直也、ありがとう」
食器を並べるなんて、小学生でもできること。
それなのに茜は、こういうお手伝いレベルのことをすると、大袈裟なくらい喜んでくれるし褒めてくる。
― この子、やりたがりなんだな。
そう思った。料理も家事も、自分でやりたいのだろう。そこに僕が手出しをするのはあまり良く思わないのかもしれない。
ただ、この程度だったらまだ良かった。交際期間が長くなるにつれて、さらに僕は茜を女性として見られなくなっていく…。







この記事へのコメント
お母さんにしか思えないとか、直也が付き合う価値ない男(オカンとバカ息子って書いた人御名答)、あと「後片付け含めて料理だからね」ってやっぱりウザいね。