◆これまでのあらすじ
大好きな豪の自慢の彼女でいるため、20時以降は何も食べないダイエットをしていたのに振られてしまった市子。編集者として活躍するも、恋愛経験に恵まれない双葉。そして、そんな双葉の想い人だった六郎と結婚し、主婦として閉塞的な日々を過ごす早紀。3人はそれぞれの悲しみの中、深夜の美食に救われる経験をして──。
▶前回:「子どもが生まれてから、夫婦の間に溝ができた…」28歳妻の孤独な夜
Vol.4 <市子:三軒茶屋のお茶とおでん>
新宿の野外イベントスペースに無事に大きなクリスマスツリーが立ったのは、22時を過ぎた頃だった。
「うう…寒い…手が凍っちゃいそう」
明日土曜日はとある女性アーティストの新曲リリース日で、私が勤務するイベント会社がお披露目イベントの運営を請け負っている。
この広場でトークショーとミニライブを予定しているため、今夜中にクリスマスを意識した装飾を施さなければならないのだ。
このイベントの担当者として、装飾の目玉であるクリスマスツリーの出来は確認しておかなくてはいけない。
たとえ今が12月の真冬で、Apple Watchが示す現在の新宿の気温が、4.2℃という数値を示していてもだ。
「じゃあ、最後にもう一度一緒に図面のご確認をいただいてもいいですか」
残っているステージ設営の細々としたところは、私抜きでも業者さんが深夜に進めてくれる手筈になっている。
手元のiPadで図面を表示しながら責任者と打ち合わせをしつつも、私はその実、頭の片隅で全く違うことを考えていた。
― クリスマス。豪くんと過ごしたかったな…。







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