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今夜、罪の味を Vol.1

今夜、罪の味を:大好きな彼に交際半年でフラレた女。未練がある女が、夜に足を運んだ場所

有栖川匠

悲しい夜。眠れない夜。寝たくない夜。

さまざまな感情に飲み込まれそうになる夜にも、東京では美食がそばにいてくれる。

ディナータイムのあとに、自分を甘やかす“罪の味”。

今夜、あなたも味わってみませんか──?


Vol.1 <市子:東麻布のデザート>


「ねえ、市子。本当にそれだけで足りるの?」

麻布台ヒルズのヘルシーなレストランで、向かいに座った豪くんが心配そうに尋ねた。

「うん。もう19時半だし、これで十分」

そう言いながら私がフォークでつつくのは、小さなアート作品のようなサラダだ。

お皿はまるで白いキャンバスのように広々しているものの、サラダ自体の量はそう多くない。カロリーはきっと、豪くんの食べているチキンとパスタの半分にも満たないだろう。

実際、これだけでは食欲は満たされはしない。だけど、今から何か追加注文をしたのでは、確実に20時を回ってしまう。

「私が20時以降は何にも食べないの、知ってるでしょ」

「うん、知ってるけどさ。たまにはデザートとか食べてみる?とか思っただけ」

「だめだよそんなの。ギルティすぎる」

私の答えを聞くなり、豪くんはグラスに半分ほどだったビールをぐびっと一気に飲み干した。

お酒がまったく飲めない私には分からないけれど、きっと海外出張帰りの一杯というものは、相当に美味しく感じるものなのだろう。

― 豪くんの喉仏ってセクシーだな。それに、いっぱい食べるところも可愛い。

サラダを食べ終えてしまった私は、ひたすら豪くんの食べる姿を見守る。あらためて噛み締めるのは、彼が私の恋人であるという奇跡だ。

そう。豪くんは、私の恋人。そしてそれは私にとって、まるで夢みたいな奇跡。

いつまでも豪くんに似合う自分でいようと思うのなら、夜遅くにデザートを食べるだなんて行為は───“罪”としか言いようがない。

だから私は、20時以降は何も食べない。

これからもずっと、ずっと、豪くんのそばにいたいから。

この記事へのコメント

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No Name
記念日だからと、海外出張帰りにオシャレなレストラン連れて行ってもお酒は全く飲まずサラダだけ、デザートも要らないとか、一緒にいても楽しくないもう無理ってなったんだろうね。
2025/11/17 05:217
No Name
一話完結ではなく、市子のスイーツ食べ歩き連載なんですね......
2025/11/17 05:294
No Name
表紙の画像?カバー写真?女性が指くわえてる白黒の。ストーリー内容と全く合ってない。どうしちゃった?!唇だけ赤くてバンパイヤみたい。これ見たら、未練タラタラで夜彼の部屋に行き....ストーカー殺人みたいなストーリーかと思ってしまった。顎上げてるようにも見えて、卑猥な方を想像する人もいるんじゃない? ミスマッチ通り越してキモいとさえ感じる。
2025/11/17 06:203Comment Icon1
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今夜、罪の味を

有栖川匠

悲しい夜。眠れない夜。寝たくない夜。

さまざまな感情に飲み込まれそうになる夜にも、東京では美食がそばにいてくれる。

ディナータイムのあとに、自分を甘やかす“罪の味”。

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