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SPECIAL TALK Vol.129

~サックスと肉体は一体。パプアニューギニアでこの感覚が培われた~

金丸恭文氏 フューチャー株式会社 代表取締役会長兼社長
大阪府生まれ、鹿児島県育ち。1989年起業、代表取締役就任。


たくさんの出合いを経て、再び自分の音楽に集中


金丸:大学に進学されて以降、パプアニューギニアに戻る機会はありましたか?

松丸:ないです。離れたのが2014年なので、もう11年になりますが、帰りたいと思ったこともないです。慣れ親しんだ場所から別の知らない場所に移るという経験を子どもの頃から何度かしているので、パプアニューギニアに限らず、どこか特定の場所に執着していないんじゃないかなと思います。生まれ育った場所に戻らなきゃいけないとか、そういう感覚が自分の中にないんでしょうね。

金丸:勝手ながら、唯一無二の生い立ちですし、誰もまねできないので、二度と帰らないというのも、ちょっともったいない気がします。

松丸:死ぬまでに1回は行くかもしれません。ただ、気になっていることもあります。パプアニューギニアでさまざまな鉱山資源が見つかり、先進国の資本が入ってきて開発が進んだ結果、サンゴ礁が失われていて。きれいだった海がなくなっていって悲しいですね。

金丸:急激な産業化は、環境へのダメージが大きいですからね。

松丸:「プラスチックをどう処分すればいいか」という素地がないところに、プラスチック製品やパッケージされた食品が一気に入ってきたら、街がゴミだらけになるのは必然です。バナナの皮は道端や山に捨てておけば、微生物が分解して勝手になくなる。そんな感覚が当たり前のところなので。

金丸:そういう感覚を肌身で知っているというのは、やっぱり松丸さんのオリジナリティの一部だと感じます。多様なバックグラウンドを持つ人が、いま以上にいろいろなところで活躍してこそ、世の中はもっと面白くなるし、良くなっていくのではないでしょうか。ところで、最近は音楽活動のほかに、映画にも出演されたそうですね。

松丸:2023年に公開された『白鍵と黒鍵の間に』ですね。映画や今回の対談のように、声がかからないとできないことに挑戦できるのはありがたいです。「やってみたら面白いかな」と思っていることを、仕事としてオファーしてもらえることがちょくちょくあって、「自分って運がいいな」「ありがたいな」と常々思っています。

金丸:私の意見ですが、チャンスって誰にでもあるんですよ。ただ、それに気付くかどうか、気付いたとしてもそのチャンスを掴もうとするかによって、結果は大きく違います。

松丸:なるほど。僕はここ2年ぐらい流れに身を任せていて、思いがけないオファーを受けながら生きています。

金丸:例えば、どんな仕事ですか?

松丸:直近だと、ファッションショーの音楽制作ですね。先ほどお話しした「無機質なところから作る」アプローチと、ランウェイを歩くモデルのための音楽をどう両立させるかというのがすごく楽しくて。普段のライブは数人が舞台に立ち、1時間とか2時間は続く。一方、ファッションショーはたくさんのモデルが参加して、10分くらいで終わってしまう。時間は短いけれど、凝縮されていく感覚がとても刺激的で、何か新しいものを得られたように感じるんです。

金丸:では、これまでとはまた違う作品が、松丸さんから生み出されていくんですね。

松丸:自分のアルバムを最後に出したのが、2年半くらい前になります。しばらく受け身だったので、また自分からやっていこうと思っているところです。

金丸:松丸さんの今後がますます楽しみになってきました。唯一無二のバックグラウンドを持つ松丸さんのご活躍を、陰ながら応援いたします。今日は本当にありがとうございました。

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