長く根付く店には、街との固い絆があるものだ。
古き良き文化が残る自由が丘、新丸子、武蔵小杉で代々親しまれる4軒を訪ねると、店と地元客が紡ぐ愛の物語が見えてきた。
◆
東京カレンダーアプリ(iOSの方・Androidの方)なら、発売中の月刊誌最新号の電子書籍がどこよりもお得に購入いただけます!また、この記事から1クリックで、レストラン予約サイト「グルカレ by 東京カレンダー」へ。すぐに店の予約ができます!
1.【2001年創業】名物女将の笑顔が、自由が丘のスペイン食堂にマダムを集わせる
『エル・ペスカドール』@自由が丘
「ある著名人の方はイカ墨を使ったウチの料理をすごく気に入ってくださったみたい。もうかれこれ20年近く、週に一回お見えになるわよ」
そう教えてくれたのは、自由が丘のスペイン料理店『エル・ペスカドール』の女将・清水静子さんだ。
かつては近所の西小山で夫と共に鮮魚店を切り盛りしていたが、24年前に心機一転。本場スペインやフランスで料理人としての研鑽を積んだ息子の雄一さんに誘われ店を始めた。
“漁師”を意味する屋号には、父と母への感謝と敬意が込められている。
清水さん一家はとにかく愉快。
例えば、看板メニューの「魚介のパエリア」に隠し味として肉の出汁が使われていることをシェフが説明しているそばから、肉ではなくどれほど魚介の出汁が素晴らしいか、女将が滔々と語る。そのありさまはまるで話が噛み合わない漫才のようで、思わずこちらもクスッとしてしまう。
この家族経営ならではの陽気な雰囲気に魅了され、地元民が定期的に足を向けるのだ。
今日も自由が丘マダムやカップルが席を埋め尽くし、ご機嫌な会話を存分に楽しんでいる。
■店舗概要
店名:エル・ペスカドール
住所:目黒区自由が丘1-13-4
TEL:03-3723-8471
営業時間:11:30~LO13:15/17:00~LO20:30(日~LO20:00)
定休日:月曜
席数:カウンター5席、テーブル28席
2.【1984年創業】“ネギ塩焼肉の元祖”が近所にある。この街の食の豊かさに感服!
『炭火焼肉 漢江』@自由が丘
田園調布に近く、代々の土地持ちなど本物を知る目の肥えた住民が多い自由が丘には、本質的にいいものが根付く。
この街で40年ほどの歳月を刻んできた『炭火焼肉 漢江』はまさにそんな一軒だ。
食通の間では、ネギを包丁で丹念に叩いて仕上げた「ネギ塩焼肉」の発祥店としてつとに知られる。
肉は切り込みを入れることで子どもでも食べやすく、キムチをはじめとしたつまみは自家製にこだわるなど、手間暇を惜しまない姿勢こそが長く支持される所以だ。
梅沢富美男さんをはじめ、プロスポーツ選手などの著名人も、家族や気心知れた友人たちとやってくる。
「ある元プロ野球選手の方は幼なじみの方々と定期的に食事会をなさっていて、店をご贔屓にしてくださっています」と、3代目店主の谷 一将さんが明かしてくれた。
感心するのは、高級住宅街という好立地にあぐらをかくことなくコストパフォーマンスの高さをキープする誠実さ。
コロナ禍以前は深夜1時まで営業していたそうだが、閑静な住宅街にあってそれが可能だったのは地元の厚い信頼を得ているからにほかならない。
3.【1979年創業】商店街に灯る唯一無二の洋食店。76歳シェフの味に通う理由がある
『キッチンTiKi』@新丸子
再開発で賑わう武蔵小杉駅からひと駅都心寄りの新丸子駅。駅周辺の商店街には昭和の面影が残り、のんびりした風情を漂わせている。
その一角にあるのが、コック帽がよく似合ういぶし銀のごときシェフ・高久達夫さんと、奥様の久子さんが出迎えてくれる洋食店『キッチンTiKi』だ。
話を聞くと、新丸子を選んだのは偶然だった。
「もともと蒲田に住んでいたから東横線沿いで店をやりたくて、武蔵小杉周辺で探していたのですが、良いところがなかった。ここに決めたのは地元の不動産屋さんや大家さんが親身になってくださったから。
駅近の立地なので当時は朝から終電まで営業して。常連さんと話し込んでいたら新聞屋さんが朝刊を持ってきた……なんてこともあったなぁ」と高久シェフ。
その温かな人柄がつなぐ縁が店の歴史を作っている。
46年経ったいま、老舗の味を求める客がひっきりなしにやってきて、時には列をなす。
料理を作る上で大事なのは「奇をてらわず、同じことを丹念に続けること」。その実直なシェフの味を求めて3世代で訪れる家族も少なくない。
■店舗概要
店名:キッチンTiKi
住所:川崎市中原区新丸子東1-830
TEL:044-433-8902
営業時間:11:30~16:00/18:00~22:00
定休日:月曜
席数:カウンター10席、テーブル26席
4.【1970年代創業】3代目店主の酒場には、刺激的な一日の終わりの粋な夜が待っていた
『串焼 文福 本店』@武蔵小杉
いまやタワーマンションが林立する武蔵小杉だが、かつては京浜工業地帯の一翼を担った一大工場地域。労働者たちの日々の疲れを癒やした渋い酒場が、そこかしこに残っている。
その中の一軒が創業から50年近くも地元で愛され続けている『串焼 文福 本店』だ。
赤提灯がゆらめく裏道を歩いていくと金文字で「文福」と揮毫(きごう)される年季が入った看板が見え、3代目店主の大野木 寛さんが迎えてくれた。
「もともと祖父母が屋台から始めました。当時のカレーブームから着想を得て考案したカレー味のもつ煮がウチの名物です。
この武蔵小杉の店で営業するようになってからも伝統の味は健在。豆腐が入っているのも特徴的で、『ほかでは食べられない』と贔屓にしてくださるお客さまも少なくありません。
しっかり飲んで食べても5,000円でお釣りがくると思いますよ」
3日かけて丁寧に煮込まれる“文福”名物の「元祖カレー煮込み」(¥480)は、ぜひとも味わいたい一品。
ほかにも樽出しの希少な生ホッピーや個性派の串焼きなどが酒飲みの胃袋と心を満たす。
この街はこれからも変わり続けるだろうが、昭和の時代から住民に親しまれるこんな粋な店はいつまでもその灯をともし続けてほしい。
■店舗概要
店名:串焼 文福 本店
住所:川崎市中原区新丸子町915
TEL:044-711-3688
営業時間:17:00~LO22:30(金~LO23:00)
定休日:月曜
席数:カウンター8席、テーブル62席
さらに詳しく知りたい方は「東横線プライド」を今すぐ手に入れよう!
『東京カレンダー』2025年7月号は「東横線プライド」。都内随一のお洒落さを誇る沿線を総力取材!
月刊誌『東京カレンダー』は、毎月21日頃の発売です。お近くの書店、コンビニでお求めいただけます。
⇒紙版をお求めの方はこちらから
また、買いに行く時間がない方、近くのお店で売り切れてしまっている方には、インターネットでの購入もお勧めです。
⇒通常版はこちらから
⇒特別増刊はこちらから
最新号も過去号(約10年分)も、東カレアプリ内のコインで購入するのが一番お得です!(通常版のみ)
⇒アプリでのご利用はこちらから(iOSの方・Androidの方)
※最新版のアプリをダウンロードしてください。
月刊誌最新号「シェフたちを刺激する店。」はこちらから!
今月の『東京カレンダー』は「シェフたちを刺激する店。」。プロが認めるレストランをチェックしよう!
月刊誌『東京カレンダー』は、毎月21日頃の発売です。お近くの書店、コンビニでお求めいただけます。
⇒紙版をお求めの方はこちらから
また、買いに行く時間がない方、近くのお店で売り切れてしまっている方には、インターネットでの購入もお勧めです。
⇒購入はこちらから
最新号も過去号(約10年分)も、東カレアプリ内のコインで購入するのが一番お得です!(通常版のみ)
⇒アプリでのご利用はこちらから(iOSの方・Androidの方)
※最新版のアプリをダウンロードしてください。