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自由が丘ほか高級住宅街の名店4選。洋食、焼肉、酒場…地元客が数十年通い続ける味、愛される店の秘密

長く根付く店には、街との固い絆があるものだ。

古き良き文化が残る自由が丘、新丸子、武蔵小杉で代々親しまれる4軒を訪ねると、店と地元客が紡ぐ愛の物語が見えてきた。



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1.【2001年創業】名物女将の笑顔が、自由が丘のスペイン食堂にマダムを集わせる
『エル・ペスカドール』@自由が丘

自由が丘『エル・ペスカドール』の清水静子氏、勝美氏

女将の静子さんは84歳という年齢を感じさせないほど、かいがいしく世話を焼いてくれる。隣は夫の勝美さん


「ある著名人の方はイカ墨を使ったウチの料理をすごく気に入ってくださったみたい。もうかれこれ20年近く、週に一回お見えになるわよ」

そう教えてくれたのは、自由が丘のスペイン料理店『エル・ペスカドール』の女将・清水静子さんだ。

かつては近所の西小山で夫と共に鮮魚店を切り盛りしていたが、24年前に心機一転。本場スペインやフランスで料理人としての研鑽を積んだ息子の雄一さんに誘われ店を始めた。

“漁師”を意味する屋号には、父と母への感謝と敬意が込められている。

自由が丘『エル・ペスカドール』の「魚介のパエリア」

エビ、カニ、ムール貝など海の幸がふんだんに使われた「魚介のパエリア」¥4,600。米が魚介の旨みをたっぷり含んで美味


清水さん一家はとにかく愉快。

例えば、看板メニューの「魚介のパエリア」に隠し味として肉の出汁が使われていることをシェフが説明しているそばから、肉ではなくどれほど魚介の出汁が素晴らしいか、女将が滔々と語る。そのありさまはまるで話が噛み合わない漫才のようで、思わずこちらもクスッとしてしまう。

この家族経営ならではの陽気な雰囲気に魅了され、地元民が定期的に足を向けるのだ。

自由が丘『エル・ペスカドール』の「小エビのアヒージョ」、「マッシュルームのアヒージョ」

「小エビのアヒージョ」(¥980)や「マッシュルームのアヒージョ」(¥1,200)など、ワインが進むタパスも充実


今日も自由が丘マダムやカップルが席を埋め尽くし、ご機嫌な会話を存分に楽しんでいる。

自由が丘『エル・ペスカドール』の外観


■店舗概要
店名:エル・ペスカドール
住所:目黒区自由が丘1-13-4
TEL:03-3723-8471
営業時間:11:30~LO13:15/17:00~LO20:30(日~LO20:00)
定休日:月曜
席数:カウンター5席、テーブル28席

2.【1984年創業】“ネギ塩焼肉の元祖”が近所にある。この街の食の豊かさに感服!
『炭火焼肉 漢江』@自由が丘

自由が丘『炭火焼肉 漢江』の外観


田園調布に近く、代々の土地持ちなど本物を知る目の肥えた住民が多い自由が丘には、本質的にいいものが根付く。

この街で40年ほどの歳月を刻んできた『炭火焼肉 漢江』はまさにそんな一軒だ。

自由が丘『炭火焼肉 漢江』の「上タン塩」

約30分叩いたネギを隙間なく敷き詰めた「上タン塩」¥2,750。まるで肉の繊維にネギの風味が入り込むがごとく一体化して旨い。レモンとも好相性


食通の間では、ネギを包丁で丹念に叩いて仕上げた「ネギ塩焼肉」の発祥店としてつとに知られる。

自由が丘『炭火焼肉 漢江』のネギ塩焼肉

ネギ塩焼肉は片面を焼いたら一度返し、ネギを炙ってからいただくとより香ばしく味わえる


肉は切り込みを入れることで子どもでも食べやすく、キムチをはじめとしたつまみは自家製にこだわるなど、手間暇を惜しまない姿勢こそが長く支持される所以だ。

自由が丘『炭火焼肉 漢江』の「ネギメシ」

ネギを豪快にご飯にのせた「ネギメシ」¥400。見た目は簡素だが、咀嚼すればするほど旨みが充満し多幸感に包まれる


梅沢富美男さんをはじめ、プロスポーツ選手などの著名人も、家族や気心知れた友人たちとやってくる。

「ある元プロ野球選手の方は幼なじみの方々と定期的に食事会をなさっていて、店をご贔屓にしてくださっています」と、3代目店主の谷 一将さんが明かしてくれた。

自由が丘『炭火焼肉 漢江』のメニュー

通の間では唐辛子入りの自家製味噌ダレで揉んだ辛味噌味も人気


感心するのは、高級住宅街という好立地にあぐらをかくことなくコストパフォーマンスの高さをキープする誠実さ。

コロナ禍以前は深夜1時まで営業していたそうだが、閑静な住宅街にあってそれが可能だったのは地元の厚い信頼を得ているからにほかならない。

炭火焼肉 漢江(自由が丘) | デートに使える東京のレストランはグルカレで予約

3.【1979年創業】商店街に灯る唯一無二の洋食店。76歳シェフの味に通う理由がある
『キッチンTiKi』@新丸子

新丸子『キッチンTiKi』の内観

高久さん夫婦と会話できるカウンターが特等席。磨き上げられたガラスランプが時代を超えて純白の光を放つ


再開発で賑わう武蔵小杉駅からひと駅都心寄りの新丸子駅。駅周辺の商店街には昭和の面影が残り、のんびりした風情を漂わせている。

その一角にあるのが、コック帽がよく似合ういぶし銀のごときシェフ・高久達夫さんと、奥様の久子さんが出迎えてくれる洋食店『キッチンTiKi』だ。

新丸子『キッチンTiKi』の高久達夫シェフ

昼時は30人前を一気に作ることも。無駄のない手さばきが見事だ


話を聞くと、新丸子を選んだのは偶然だった。

「もともと蒲田に住んでいたから東横線沿いで店をやりたくて、武蔵小杉周辺で探していたのですが、良いところがなかった。ここに決めたのは地元の不動産屋さんや大家さんが親身になってくださったから。

駅近の立地なので当時は朝から終電まで営業して。常連さんと話し込んでいたら新聞屋さんが朝刊を持ってきた……なんてこともあったなぁ」と高久シェフ。

その温かな人柄がつなぐ縁が店の歴史を作っている。

新丸子『キッチンTiKi』の「ダイスカットステーキ&カニクリームコロッケ」

人気の一品「ダイスカットステーキ&カニクリームコロッケ」¥2,370。「お腹いっぱいになっていただきたい」との思いから料理はどれもボリューム満点


46年経ったいま、老舗の味を求める客がひっきりなしにやってきて、時には列をなす。

料理を作る上で大事なのは「奇をてらわず、同じことを丹念に続けること」。その実直なシェフの味を求めて3世代で訪れる家族も少なくない。

新丸子『キッチンTiKi』の外観


■店舗概要
店名:キッチンTiKi
住所:川崎市中原区新丸子東1-830
TEL:044-433-8902
営業時間:11:30~16:00/18:00~22:00
定休日:月曜
席数:カウンター10席、テーブル26席

4.【1970年代創業】3代目店主の酒場には、刺激的な一日の終わりの粋な夜が待っていた
『串焼 文福 本店』@武蔵小杉

武蔵小杉『串焼 文福 本店』の内観

10年ほど前に建て直した本店は古木の柱や梁を生かした古民家風。1階のカウンター席のほか、2階にテーブル席、3階に小上がりの座敷がある


いまやタワーマンションが林立する武蔵小杉だが、かつては京浜工業地帯の一翼を担った一大工場地域。労働者たちの日々の疲れを癒やした渋い酒場が、そこかしこに残っている。

その中の一軒が創業から50年近くも地元で愛され続けている『串焼 文福 本店』だ。

赤提灯がゆらめく裏道を歩いていくと金文字で「文福」と揮毫(きごう)される年季が入った看板が見え、3代目店主の大野木 寛さんが迎えてくれた。

武蔵小杉『串焼 文福 本店』の大野木 寛氏

店主の大野木さんは武蔵小杉で生まれ育つ、街を愛する男


「もともと祖父母が屋台から始めました。当時のカレーブームから着想を得て考案したカレー味のもつ煮がウチの名物です。

この武蔵小杉の店で営業するようになってからも伝統の味は健在。豆腐が入っているのも特徴的で、『ほかでは食べられない』と贔屓にしてくださるお客さまも少なくありません。

しっかり飲んで食べても5,000円でお釣りがくると思いますよ」

武蔵小杉『串焼 文福 本店』の「元祖カレー煮込み」


3日かけて丁寧に煮込まれる“文福”名物の「元祖カレー煮込み」(¥480)は、ぜひとも味わいたい一品。

武蔵小杉『串焼 文福 本店』の「生ホッピー」

店のロゴ入りカップで酒を。きめ細かな泡を楽しめる「生ホッピー」(¥630)や、希少な日本酒をそろえるなどこだわりアリ


ほかにも樽出しの希少な生ホッピーや個性派の串焼きなどが酒飲みの胃袋と心を満たす。

この街はこれからも変わり続けるだろうが、昭和の時代から住民に親しまれるこんな粋な店はいつまでもその灯をともし続けてほしい。

武蔵小杉『串焼 文福 本店』の外観


■店舗概要
店名:串焼 文福 本店
住所:川崎市中原区新丸子町915
TEL:044-711-3688
営業時間:17:00~LO22:30(金~LO23:00)
定休日:月曜
席数:カウンター8席、テーブル62席

▶このほか:近頃「中目黒」の“港区化”が加速中。デートにもぴったりな、大人の感性に響く煌びやかな店4選

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