2025.02.21
SPECIAL TALK Vol.125
大好きな「ホーム」を去り「芸能1年目」から再スタート
金丸:AKBにいらしたのは、何歳から何歳までですか?
松井:17歳から25歳までです。
金丸:アイドル時代、一番楽しかったことはなんですか?
松井:楽しい思い出はいっぱいありますが、毎日ステージに立てることが楽しかったし、ありがたかったですね。もちろん東京ドームとか大きい会場でのライブは達成感があったけど、秋葉原に自分たちのホームである劇場があることが、私にとってはすごく意味がありました。
金丸:「会いに行けるアイドル」と言われていましたが、秋葉原にある劇場って、お客さんがそんなに身近なんですか?
松井:250人しか入れない劇場なので、必然的に距離がすごく近いんです。こちらからもお客さんの顔がよく見えるし、いつも通ってくださる方のことは自然と覚えるくらいでした。
金丸:そのホームでライブをするのが何より楽しかったと。
松井:「帰る場所がある」みたいな喜びもありましたね。みんな別々の仕事をしていても、劇場に帰れば仲間がいるという。
金丸:だけど、仲間であると同時にライバルでもありますよね。「総選挙」とかあったじゃないですか。
松井:総選挙の期間は、正直つらかったです。でも、メンバー同士での軋轢みたいなのは特にありませんでしたよ。
金丸:本当ですか?「この子だけは許せない!」みたいなことは?
松井:ないです、ないです(笑)。楽屋なんかも学校みたいな感じで、本を読んでる子もいれば、みんなではしゃぐ子もいるし、寝ている子もいれば、静かに空を見つめている子もいる。人数が多いこともあって、それぞれ好きなように過ごしていて、その感じが私はすごく好きでした。
金丸:では単なる所属以上に、ホームと感じていたAKBを去るときはどんな気持ちでしたか?
松井:寂しい気持ちがなかったわけではないけど、AKB時代からひとりで仕事をさせていただく機会が多かったので、「ここからまた芸能1年目の気持ちでいこう」と。「自分のことを誰も知らないのが当たり前」って気持ちを切り替えました。
金丸:強いですね。ご両親やご家族はいかがでしたか?
松井:私の活動をすごく応援してくれていたので、「卒業しようと思う」って伝えたら、ちょっと寂しそうにしていましたね。
金丸:卒業はご自身で決めるものなんですか?
松井:そうです。「そろそろかな」って。今はまた変わってきているかもしれませんが、当時「女性アイドルは若ければ若いだけ良い」という価値観が強くて、「25歳を過ぎたら卒業かな」という空気がありました。
金丸:じゃあ、自分で決めたと言っても、空気に流されたとまでは言わずとも、影響は受けてのことだったんですね。
松井:ひと周り下の子たちと一緒に仕事することがあって、そうすると20代でもおばさん扱いされるくらい特殊な環境で。
金丸:20代なんて、これから何だってできるじゃないですか。
松井:そうなんですよ。新しいことに挑戦しようという気持ちがなかったわけじゃないけど、「もう頭打ちだな」と思っていたのも事実で、感覚がマヒしちゃってましたね。飛び出してみて、全然違う世界が広がっているのを感じました。
一度断念した音楽の道。一念発起して大学で学び直す
金丸:AKBを卒業されて、どのくらい経ちましたか?
松井:今年で10年になります。
金丸:在籍していた期間よりも、辞めてからのほうが長くなったんですね。この10年を振り返ってみて、どうですか?
松井:クラシックやピアノという切り口でテレビやラジオで活動したり、ライブをやったり、とても充実していました!
金丸:即答されるということは本当に充実されていたんですね。そういえば、ご結婚もされたんですよね。
松井:はい。まだ2年目ですが、お笑い芸人の上田航平さんと。
金丸:好きなピアノやラジオを武器に活動されて、お笑い好きでお笑い芸人とご結婚。なんだか、身近な素材でおいしい料理を作るシェフみたいな人生ですね(笑)。
松井:たしかに、そう言われるとそうですね(笑)。
金丸:冒頭でセカンドキャリアの話をしましたが、松井さんみたいに身近なところから興味があること、できることを探して次の道に繋げるって、ものすごく大事だと思います。
松井:ある意味、贅沢な悩みなんですが、卒業後、いろいろなことをやらせていただいているので、自分のことを何と名乗ればいいかよくわからないんですよ。「ピアニスト」と紹介されることが結構多いんですが、私の口からピアニストと名乗ったことはないんです。
金丸:しっくりくる肩書というか、キャッチコピーが必要かもしれませんね。
松井:結局、卒業して10年経っても、一番分かりやすいのが「元AKB」なので、自分が何者なのか、何ができるのか、ちゃんと一度整理しなきゃいけないと思っています。
金丸:でも松井さんって、お話を伺っていると、いろんな挑戦をしつつも地に足がついた感じがしますよね。現役を引退したプロスポーツ選手がいきなり飲食店を始める、というのがひと昔前はよくありました。だけど、世の中って、やっぱりそれまでの蓄積がものを言う。全然違うジャンルに挑戦して成功できるのは、ほんのひと握りです。
松井:全然違うことに手を出すことは考えなかったですね。むしろ、一度音楽に立ち戻ったというか。AKB時代に「現役音大生」と紹介されることが多かったんですが、あまりに忙しすぎてまともに通学できず、結局中退したんです。
金丸:そうだったんですか。
松井:でも、音楽の仕事をしたいという気持ちはずっとあったので、25歳になる年に、別の短大の音楽専攻に入り直しました。
金丸:25歳ということは、AKBを卒業してすぐにということですか?
松井:AKB卒業前に入学しました。今度はちゃんと勉強して卒業したいという思いも、AKBを卒業すると決めた一因でした。
金丸:次に向けての準備を始めてからの卒業だったんですね。日本ではまだ浸透していませんが、世界では「人生に迷ったら大学に一旦戻る」というのが普通の選択肢なんですよ。
松井:そうなんですか。全然知りませんでした。
金丸:最近日本でもリカレント教育とかリスキリングと言われるようになりましたが、大学に通えば勉強できるし、人と出会えるし、さらに考える時間ができる。学位が取れて知識も増えて、これからの人生をじっくり考えられるって、いいこと尽くめじゃないですか。
松井:よかった。間違ってなかったんですね。
金丸:松井さんはその時点で25歳でしょう。まだまだ若いから、いくらでも悩み、考える時間がたくさんある。だから焦ってすぐ次に行くのではなく、もう一度ちゃんと学ぼうと決断したことは、いい判断だったと思います。
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