SPECIAL TALK Vol.125

~卒業して気付いた「まだまだ何でもできる」。元アイドルの肩書に縛られず、自由に挑戦を続けたい~


教師の一家に生まれ、自然とピアノを習い始める


金丸:早速ですが、お生まれはどちらですか?

松井:埼玉県の蕨市です。埼玉県のほぼ南端ですが、日本一面積の狭い市で、どこにでも自転車で行けちゃうくらいです。人口密度も市町村のなかでは一番高いんですよ。

金丸:東京に近くて街が賑やかなぶん、東京生まれと感覚はほとんど変わらないのでは?

松井:でもやっぱり、子どもの頃は埼玉県の子でしたね。自分は「埼玉ではかなりピアノがうまい方だ」みたいに思っていましたから。

金丸:ピアノはいつ始められたのですか?

松井:4歳のときです。ただ、明確には覚えていなくて、「やりたい」と言った記憶もありません。

金丸:ではご両親が習わせたかったんですかね。

松井:4歳上の兄がいるんですが、その兄がピアノを習っていたからかと。すごく影響を受けていて、ピアノのほかに深夜ラジオやお笑いが好きなのも兄の影響です。それに音大付属の高校に入ったのも。

金丸:ということは、とても仲が良いんですね。

松井:良いですよ。喧嘩した記憶はありません。

金丸:相当かわいがられたんですね。ちなみにお兄様は今も音楽を?

松井:今は学校の先生をしています。実はうちは教師一家というか、教師一族なんですよ。父も学校の先生だし、おじやおばも先生。母はピアノの先生です。

金丸:教師一族!不良学生だった私からすると、最も遠い存在の方たちです(笑)。お母様がピアノの先生ということは、松井さんはお母様から習ったんですか?

松井:それが、兄は母から習ったんですが、母がちょっと厳しすぎたようで、兄はピアノが嫌になっちゃったんです。だから私のときは、母は自分で教えるのはやめて、地元のほかの先生のところに通うことになりました。

金丸:なるほど。親子だと距離感が難しそうですね。ピアノはどのくらい練習されていたんですか?

松井:毎日です。小学校のときは学校から帰って1、2時間くらい。でも楽しかったですよ。

金丸:ほかにスポーツや習い事は?

松井:地元の合唱団に入っていましたけど、音楽ばっかりで、スポーツは一切やってません。

金丸:じゃあ、学校の成績も音楽は5で、体育は3とか?

松井:2です(笑)。成績表を見た親が「2なんて評価、普通は付くはずがない」って心配して、三者面談のときに「すごい態度が悪いとか、先生に失礼なことをしたんですか」って聞いたら、「単純に全然できないだけです」って(笑)。

金丸:すごい、それは恥ずかし過ぎますね(笑)。

松井:それくらい運動音痴なんです。

金丸:学校の体力テストでやるハンドボール投げは、どのくらいの記録でしたか?

松井:5メートルくらい。なのに、AKBを卒業後、始球式のお仕事をいただいたことがあって。

金丸:マウンドからバッターまで18メートルもありますよ!?

松井:うちの父が野球部の顧問をしていたので、1ヶ月間、みっちり特訓してもらいました。

金丸:ちゃんと届きました?

松井:それがギリギリ届かなくて、ワンバウンド。でも、投球フォームはすごく褒めてもらえました(笑)。

金丸:じゃあ、いつかリベンジしてほしいですね。次はちゃんとキャッチャーまで届かせましょう(笑)。

ピアニスト志望のはずが母の応募でアイドルに


金丸:学校は地元の公立に通ったんですか?

松井:はい、小・中は地元で、高校は兄と同じ東京音楽大学付属高校に。

金丸:4歳からずっとピアノを習って、音大付属の高校に進学となると、やはりピアニストになることを目指されていたのですか?

松井:卒業アルバムには「ピアノの先生かピアニストになりたい」って書いていましたし、音楽関係の仕事をしたいと思っていました。だけど、高校生になって初めて「音大を出ても、ピアノで食べていける人は少ない」という当たり前の事実に気付いて、「将来どうしよう」と悩むように。

金丸:音楽一筋だったところからアイドルに行くって、近いといえば近いですが、何がきっかけだったんですか?

松井:それが、きっかけは私じゃなくて、母が応募したんです。

金丸:なんでまたお母様が? かつての自分の夢を託したとか?

松井:私も聞いたんですけど、「落ちるのが当たり前だと思って、思い出づくりに行ってきなさい」と言うくらいで、どうして応募したのかについてちゃんと話してくれなくて。

金丸:気になりますね。今日はお母様もお招きすればよかった(笑)。「我が子ながら、ほかの子より絶対かわいい」と思われていたのでは?

松井:どうなんでしょうね。勝手に応募されたというのもあって、面接には「絶対アイドルなんかならない」って気持ちで行ったんですよ。しかも、ピアニストにはなれなさそうと思っていたものの大学受験を控えていた時期だったので、「何を聞かれても答えないぞ」と。

金丸:えっ、じゃあ無言で面接を通過したんですか!?

松井:いえ、答えちゃいました。

金丸:なんじゃそりゃ。意思が弱すぎませんか(笑)。

松井:いや、アイドルという存在は好きだったんです。でも、自分がなるなんて考えたこともなかったし、アイドルっていうキャラでもなかったので、嫌というか納得できない気持ちがあって。

金丸:だけど、合格しちゃってますからね。

松井:最初は「仮合格」だったんですよ。それが高校2年生の冬。そして3年生で正式に合格。それからは毎日のようにダンスのレッスンがありました。もう入っちゃったので、「やるしかない」という気持ちでしたね。

金丸:体育が2だったのに……。

松井:いや、本当に大変でしたよ。ダンスなんてやったことないですし、いつも居残り組でしごかれていました。

金丸:周りは経験者が多かったんじゃないですか?

松井:そうですね。それもダンスだけじゃない。自分では「埼玉だったらかわいい方」と思っていたんですが、ビジュアルも歌も、上には上がいることを思い知らされました。そもそも高校に入学したときもそうでした。全国からトップレベルの子が集まってくるので、ピアノに対する自信が揺らいで。自信だけ持って東京音大やAKBに飛び込んで、それが潰されたのが高校時代でした。

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