2024.11.16
池尻・三宿に住む人にはなじみ深い道がある。目黒区から世田谷区にかけて走る、「淡島通り」だ。
ここには、数こそ多くはないが、高コスパな店から高級店まで、楽しさ、味わい、雰囲気でこの街を体現する良店が点在する。
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旧山手通りと環七を繋ぐ、この街を象徴する都道がある
松見坂交差点から環七通りの若林陸橋までを結ぶ、都道423号線。通称「淡島通り」。
私鉄の駅から離れた目黒区や世田谷区の閑静な住宅地を横断する、近隣住人のライフロードだ。
淡島通りのはじまり、目黒区は松見坂付近はお忍び感漂う街の空気と相まって、密やかながらも艶やかな店が静かに連なる。
住宅街を過ぎ、世田谷区に入ると淡島交差点。周囲に点在する個人店は、ひっそりとしたルックスとは裏腹に、こだわり抜いた逸品をそろえながら、しかし、気さくな笑顔で迎え入れてくれる。
都心部にはない肩の力を抜いて楽しむ美食空間。常連になりたい。都合をつけて通いたい。地元民が慕う隠れ家は、今夜も変わらず賑わっている。
『チニャーレ エノテカ』のメニューは月替わりの¥28,000のコース1種のみ。
チーズやステーキの間に北海道産のタラ、伊勢えびを使ったブイヤベースや、なんと本まぐろやうにを使った刺身といった和の食材をふんだんに使用した料理たちも。
こちらでは日本の四季折々の美味をイタリアンの技法で存分に楽しんでほしい。
東森シェフの料理を求めて、国内外のグルメが夜な夜な松見坂交差点近くの一軒家に集まり舌鼓を打つ。
『ラッキー アレクサンダー チャイナ』は、スタイリッシュながらどこか懐かしさを覚える空間。
料理名こそ餃子、麻婆豆腐など見慣れたものが並ぶが肉肉しかったり、香辛料が心地よく香ったり、どれも洗練された味わいだ。ワインも自然派が多数そろう。
その味わいと“次世代に繋がる新スタイルの町中華”というコンセプトに惹かれて、開店1年ながら連夜、感度の高い大人で賑わう。松見坂をカジュアルに楽しむなら外せない人気店だ。
『松見坂 小林』の料理はどれも丁寧に仕事がなされ、素材の旨みが広がる美味ばかり。
中でも店主・小林大祐さんが力を入れるのが、香りや旨みなど日本酒の魅力を引き出す前菜たちと、〆に登場するうなぎ、そしてご飯だ。
うなぎは実家で養殖している大ぶりなもの、ご飯は福岡で栽培される君不知しか使用せず、蒲焼に炊き立てご飯を添えて提供する。
8席だけの美味空間は、松見坂をしっぽり過ごしたい夜にぜひ。
『DAN』のコース内容は1ヶ月半ごとで変わる。
例えばメインの黒毛和牛はBBQに見立て串に刺し、煙で燻して提供。
トマトとバジルのシャーベットを入れたフルーツトマトには国産マスカルポーネチーズやスパイスを使ったジュレをあしらい、口の中でカプレーゼに。
フレンチの伝統技法も駆使したアイデア溢れる料理をコース(¥9,350)にまとめ上げる。
池尻、三軒茶屋、下北沢……どこからも遠いが、それゆえに落ち着いた淡島で、シェフの遊び心を堪能したい。
豊洲から仕入れる魚介。揚げ物、煮物といった和の定番。そして気さくな大将の笑顔。
これだけでも十分なのに、そこに通年「おでん」まで楽しめる『おでん 柳』。
鰹節と鯖節などの出汁に夏と冬で塩加減を変えて調味。そのまま飲んでもグッとくるが、煮含ませるとタネの味を引き立てる上品な味わいに。
〆のご飯代わりに頼む人も多いのだとか。
名物が多い淡島の佳店は、今夜も酔客の笑みで満ちている。
『とんかつ太志』のディナーに使うのは吉野川ポーク。「特厚ロースかつ定食」(¥3,300)にはリブロースに近い部位300gを使用し、中屋の生パン粉をまとわせ、中温でじっくりと火入れする。
待つこと15分近く。中を淡いロゼ色に揚げられたカツにシチリアの塩をふって頬張る。
カツは噛むほどに肉の旨み、脂の甘みをもたらし、固めのご飯、自家製の糠漬けがそれらをグッと後押し。
通いたくなる店なのだ。
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