SPECIAL TALK Vol.120

~日本の農業が続くための仕組みを作り、アップデートできるよう挑み続ける~

令和のニューリーダーたちに告ぐ


三重県に拠点を置くあさい農園は、日本有数のミニトマトの生産量で知られる。創業から120年ほどと歴史は長いが、トマトの生産を始めたのはほんの15年ほど前のこと。

ツツジやサツキの苗木生産から舵を切ったのが、現在社長を務める浅井雄一郎氏だ。

農家の5代目として生まれ、後を継ぐことを期待されながらも反発していた浅井氏だが、アメリカで農業の現場を目の当たりにし、使命感に目覚める。

ビジネスパーソンとして修業を積んだのち家業を継ぎ、ミニトマト市場の伸びを捉えて今の地位に至った。現在はトマトだけでなく、果樹や苗の生産でも存在感を増しているあさい農園。

浅井氏の歩みを振り返りながら、農業のあるべき姿や農業の未来についてとことん掘り下げる。

浅井雄一郎氏 1980年三重県津市生まれ。大学卒業後、経営コンサルティング会社等を経て、家業(花木生産)を継承し、第二創業として2008年よりミニトマトの試験栽培を開始。農業法人経営のかたわら、三重大学大学院でトマトのゲノム育種研究等に取り組み、2016年に博士号を取得。「常に現場を科学する、研究開発型の農業カンパニー」を目指すことを掲げている。


金丸:本日は株式会社浅井農園の浅井雄一郎社長をお招きしました。お忙しいところお越しいただき、ありがとうございます。

浅井:こちらこそお招きいただき光栄です。

金丸:今日の対談の舞台は元麻布の『アルヴェアーレ』です。イタリアの星付きレストランで修業を積んだシェフが、こだわりの日本食材で作るイタリアンを楽しめるそうです。

浅井:料理もとても楽しみです。

金丸:浅井さんやあさい農園について簡単に読者に紹介するとなると、やはりミニトマトでしょうか?

浅井:そうですね。ミニトマトを日本で一番多く作っているのが、うちの農園です。中でも今一番売れているのが、ブドウのような房に付いたミニトマト。甘みが強く酸味が少ないのが特長で、房付きのまま収穫しているため、みずみずしいおいしさが長持ちします。

金丸:房が付いたミニトマトは、いろいろなお店で見るようになりましたね。

浅井:あさい農園では大手小売業者と提携し、プライベートブランドとしてかなりの量を供給しています。一方で、房付きとは真逆のヘタのない「はぐくみトマト」というのも生産しています。品種改良で遺伝的に木にヘタが残るようにしたもので、濃い甘みが子どもたちに大人気です。昨日は地元で子どもたちのサッカー大会に参加し、トマトを差し入れたんですが、そこでもすごく喜んでくれました。

金丸:ヘタが簡単に取れると、ロボットでの収穫も簡単そうですね。

浅井:おっしゃるとおりで、ちょっとさわったらポロッと落ちます。だから、掃除機みたいなロボットで収穫することも可能になります。

金丸:私は政府の規制改革推進会議のメンバーとして、農協改革に携わりました。日本の農作物や食文化に可能性を感じているからこそ、規制の多い中チャレンジしている農業経営者には頑張ってもらいたいし、壁をぶち壊してほしいと考えています。

浅井:私も日本の農業には可能性があると実感しています。農業の主たる原料は水と二酸化炭素ですが、世界的に見ると、水がボトルネックになっている地域がどんどん広がっています。

金丸:その点、日本は水が豊富ですからね。

浅井:一方で、世界的な農業生産企業は、日本とは比較にならないほど農地を集積した状態で生産に取り組んでいます。

金丸:だから生産効率が全然違う。日本は「農家を守る」という名目で、企業の農業進出を阻止してきました。その結果、世界の農業の進化に完全に置いていかれた。でも浅井さんは自治体とも組んで、農地集積に取り組んでいらっしゃいますよね。

浅井:遊休農地や耕作放棄地は地域課題であり、社会課題です。2019年には三重県玉城町と協定を結んで、自治体の支援を受けながら、50人以上の地権者から農地を借り受けました。7ヘクタールのキウイフルーツ農園として、昨年から出荷を始めています。

金丸:キウイも作っていらっしゃるんですね。今日は日本の若き農業経営者がどのように生まれ育ってきたのかを伺いながら、日本の農業の未来について意見を交わしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

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