2024.09.21
SPECIAL TALK Vol.120
ひとつの企業だけではなく、日本の農業を変えていきたい
浅井:あさい農園はアグロノミスト(農学者)集団として、オンリーワンの存在になろうとしています。そこに至る道筋は見えてきたので、もうしばらくしたら、私は社長の座を譲るつもりなんです。
金丸:そうなんですか!?今後は、また別の挑戦をされるということでしょうか?
浅井:やっぱり農業を取り巻く仕組みを変えるために動きたいんです。私たちはキウイの生産では、ニュージーランドのゼスプリと組んでいます。ゼスプリはキウイ生産者2,500人が作った専門農協ですが、株式会社なので生産者が全員株を持っているんです。
金丸:ということは、生産者が利益の分配を受けられると。
浅井:そうです。ゼスプリは他国でも生産量を増やして売上を伸ばし、企業価値を高めています。その利益の一部をニュージーランドの農家たちが受け取っています。
金丸:そういう農協のあり方って、日本だけしか知らなければ思いつきもしませんね。
浅井:日本だって、国内のマーケットだけで競争するのではなく、品目ごとにリンゴならリンゴ、イチゴならイチゴのゼスプリみたいな専門農協を立ち上げて、グローバル市場に打って出れば、十分に戦えると思います。ゼスプリは4,000億円、アメリカのドリスコル(イチゴ生産)は1兆円、ニュージーランドのフォンテラ(酪農業)は2.3兆円も売り上げているんです。
金丸:日本食をはじめとする日本文化が世界中から注目を浴びているのに、輸出はまったくと言っていいほど手つかずの状態です。ぼんやりしているうちに、農作物の優位性を失ってしまうかもしれない。
浅井:大豆はブラジル、小麦はカナダやオーストラリア、トウモロコシはアメリカというように、穀物というくくりでも、国によって得意な分野が違います。日本はこれまで「コメは日本だ」と言ってきたけど、コメの生産性はすでに中国などに抜かれてしまってますし。
金丸:あれだけ区画の小さな田んぼでやっていたら、抜かれて当然ですよ。
浅井:流動性がありませんからね。だから、農地と人材の流動性をいかに高めるかがカギを握ると考えています。ほんとに日本の農業をなんとかしたいんです。
金丸:浅井さんのお話を聞いていると、なんだか私までやる気が湧いてきました(笑)。若い世代で、浅井さんと同じような志を持つ農業者の仲間はいらっしゃいますか?
浅井:同じようなことを考えている仲間は、同世代や私より下の世代に20〜30人はいます。あさい農園からもどんどん独立して、日本各地に先進的な農業を行う“箱”を作ってもらえたらいいですね。
金丸:ぜひそうなってほしいです。今日は希望が持てるお話を聞かせていただき、本当に良かった。
浅井:こちらこそ、ありがとうございます。金丸さんと生でお話しできて、とても刺激的でした。
金丸:これからも浅井さんの挑戦を応援しています。お忙しいところ、ありがとうございました。