ファーストデート・女の採点表 Vol.3

六本木外資系金融マン(29)との金曜23時からの『Hiroya』(外苑前)

あぁ、忙しい。メーカー勤務の智弘(30)、弁護士事務所勤務の雅人(36)とのセカンドデートの調整に、間を縫っての合コンのオファー。スマイソンの手帳は既にびっしりと埋まっている。手帳とにらめっこをしていると、LINEが鳴った。

「愛子ちゃん。突然だけど今日夜ごはんでもどう?」先週の金曜日の合コンで出会った六本木の外資系投資銀行勤務に勤める浩(29)だ。

愛子が勤める航空業界をカバーしているアナリストで、業界の話題で盛り上がり合コン中は浩とずっと喋っていた。投資銀行の高スペックを逃すのは惜しいが、今日は外苑前にある商社とのコンパが入っている。泣く泣く断ると間髪入れずにLINEが鳴った。

「もし良ければ、愛子ちゃんの予定終わりに軽くどうかな。外苑前に午前3時までやっているカウンターフレンチがあるんだ。」

偶然にも外苑前でのコンパ。この先予定調整するとなると半月も先になる・・恋と鉄は熱いうちに打て。愛子はOKのスタンプを送った。

外苑前『Hiroya』は、午前3時までやってるフレンチとして鳴り物入りでオープンして以来メキメキと頭角を現して来たレストラン。『龍吟』で腕を磨いたシェフが振る舞うフレンチを主軸としつつ和の要素を取り入れた料理が評判らしい。

(外苑前の商社のコンパははっきり言って消化試合だった。指輪は外していたが恐らく既婚者だ。それに、この年になって山手線ゲームはないだろう。)

二軒目のお誘いを断って『Hiroya』に来ると、浩がカウンター席に腰掛けて赤ワインを飲んでいた。店内は8名のカウンター席と、奥に個室がひとつのみのこじんまりとした空間で、山手線ゲームの喧噪が嘘のようだ。

「急に呼び出してごめんね。上司に急遽出張が入ったんだ。こんな早く帰れるチャンスなかなかないから、愛子ちゃんとどうしても飲みたくて。」

投資銀行で働く男たちは2時3時に帰るのがざらと聞く。

「ごはん食べて来ているだろうけど、〆に炊き込みごはんだけでも一緒にどう?」

フレンチで炊き込みごはんというギャップに驚いた。

『Hiroya』は、リクエスト次第で好みの味のごはんに仕上げてくれるという。その日は、「砂肝のコンフィの炊き込みごはん」。大根の葉と、砂肝の食感が面白い。それでいて、どこかでほっとするのは、山椒や醤油など和の食材を取り入れているからだろう。

「こんな夜遅くに本格的なごはんを食べられるお店はなかなか無くて同僚と時々来るんだ。」

美味しそうにごはんをほおばる彼は、どこからどう見ても平凡で素朴な男の子だった。

投資銀行というだけで一種の偏見を持っていたが、浩はもしかすると『Hiroya』のようなギャップを携えた男性なのかもしれない。彼の横顔を見ながら、ふと彼のことを一歩深く知ってみたいという気持ちが芽生えた。


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