SPECIAL TALK Vol.119

~すべてを制覇したい気持ちは変わらない。経営陣になっても燃えたぎる闘志がある~

楽しむことを忘れては、スポーツは続かない


金丸:さて、オメイヤーさんはクラブに所属してすぐ正キーパーになり、若くしてフランス代表選手にも選ばれていますね。

オメイヤー:初めて代表として国際試合に出場したのは、22歳の時ですね。

金丸:そして、ヨーロッパのチャンピオンズリーグでの優勝のみならず、フランス代表として世界選手権やオリンピックでも優勝を経験されています。順風満帆なハンドボール人生のように感じますが、挫折した経験とかはあるのでしょうか?

オメイヤー:ざっといままでの人生を語ると、すごく楽に歩んできたように思われるかもしれません(笑)。だけど、もちろん難しい時期もあって、プロになる前の15〜17歳くらいの頃は、本当にいろいろありました。チームで選手に選ばれなかったり、「プロになれる選手ではない」とコーチから言われたり。一番苦い記憶は、ジュニアのナショナルチームで、メンバーから外されたことです。

金丸:そういう苦境を、オメイヤーさんはどうやって乗り越えたのですか?

オメイヤー:練習するしかないですよね。悔しさをモチベーションに換えて、いつも以上にもっと練習しよう、と。

金丸:ふてくされるとか、悲観するのではなく、練習に練習を重ねて乗り越えてきたと。

オメイヤー:そうですね。フィジカルやテクニックを鍛えるには、練習が絶対に必要です。だけど、ただ練習するんじゃなくて、日々の練習を楽しむことが重要だと思います。自分に厳しく、だけど楽しむことを忘れない。

金丸:とても共感できます。日本の部活動はいまだに古い価値観にとらわれていて、「楽しむ」という感覚が欠けているように感じることが多いですから。

オメイヤー:スポーツとは、パッションでもあるわけだから、楽しむことを忘れないというのはすごく大事です。プロであっても、単に仕事のようにこなすのではなく、「本当に好きだ」という気持ちを失わないようにしないといけません。

金丸:それでも、なかなか調子が上がらない時や、チームの雰囲気が良くない時だってありますよね。

オメイヤー:もちろんあるし、長いシーズン中だとそういう事態は避けられません。負けが続けば、やっぱりモチベーションは低下する。だけど、そういう時こそ、実は成長できるチャンスなんです。練習がうまくいかないとか、みんなやる気が出ないという時こそ、あえてみんなを奮い立たせることで、メンタルの強さを鍛えることができます。

金丸:逆境の時こそ、ポジティブへと変換することが大事なんですね。ところでオメイヤーさんは、お子さんはいらっしゃるんですか?

オメイヤー:娘と息子がひとりずついます。妻と子どもたちは全試合を見に来てくれるくらい、私にとって第一のサポーターで、オリンピックも国際大会もすべて応援しに来てくれました。

金丸:それはすごい。2019年のシーズンで選手を引退されましたが、その時はどんなリアクションがありましたか?

オメイヤー:選手を続けてほしかったようで、子どもたちはすごくがっかりしていましたね。たしかに、あと1、2シーズンは続けようと思えば続けられたでしょう。でも、選手としてのキャリアを終えたいと決断した時に終えることができたのは、本当に良かったと思っています。最終試合終了後のセレモニーでは、妻と子どもたちに囲まれて幸せでした。あのセレモニーは、永遠に私の心に残ると思います。

金丸:今はPSGのゼネラルマネージャーという、選手とは異なりますが、重要な立場にいらっしゃいます。お子さんたちは、今も試合を見に来てくれますか?

オメイヤー:現役を引退して以来、娘のほうは「もう行かない」って(笑)。息子は今13歳でテニスをしていますが、ハンドボールの試合もできる限り見に来てくれます。それに、私は選手時代から「あらゆるタイトルを獲りたい」「すべてを制覇したい」といつも考えていました。立場が変わった今でも、そういうガツガツした気持ちは変わらずにありますね。

金丸:18歳からプロ選手として活躍し、50歳近くなった今も、そうした高いモチベーションを維持されている秘訣はなんでしょうか?

オメイヤー:常に前を向いて、後ろを振り返らないことでしょうか。というのも、現役時代、私はメダルを獲得しても棚に飾ることなく、箱にしまったままでした。いつも「自分が何をしたか」ではなく、「次に何ができるか」だけを考えています。

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