◆
「それじゃあ、久しぶりの再会に…」
「乾杯!」
「カンパーイ」
「おつかれ〜」
慎吾との偶然の出会いから2週間後。私たちは再び渋谷で顔を合わせることになる。
私と慎吾はイベントサークルの幹部で、慎吾がバイトしていた渋谷の居酒屋で集まるのが決まりだった。
派手じゃなかった私が、無理をしてイベサーの幹部になったのは、慎吾がいたから。
彼のリーダーシップと人望の厚さに憧れ、いつのまにか好きになっていた。でも、関係が壊れてしまうのが嫌で、気持ちを打ち明けることなく卒業。
始まらなかったから終わりにもできず、ずっと頭の片隅にこびりついていた人。そんな彼が目の前にいるのが、不思議だった。
LINEで予定を聞かれた時は、舞い上がったがデートの誘いではなかった。
同じサークルの、祐奈(ゆうな)とアキラを含めた4人での会が開催されたのだ。
― まぁ、ふたりで会う理由もないしね…。
私が慎吾に思いを寄せていたことを知っているのは、恐らく祐奈だけ。
慎吾に女子大の彼女ができて、泣きながら祐奈に電話したことがある。
「いやぁ、美和と慎吾が偶然出会ってくれて良かったよ。もう君らとは縁が切れたのかと思ってたもん〜」
アキラが冷えた生ビールを半分ほど一気に飲んでから言った。
「まぁ、それぞれ業種も違うし、社内の人間と飲む方が多くなるから仕方ないんじゃない?」
慎吾が枝豆を口に運びながら答える。
慎吾は、起業家の出身が多いIT広告会社、アキラは飲料メーカーで、祐奈は外資系アパレル。
そう、見事に分野が違うのだ。
「なんかさ、社会に出て世界が広がったと思ったけど、結局自社のルールに従うことになるし、意外と窮屈。それに、やってることは学生の頃と変わらないよね」
祐奈はそう言いながら笑っていたが、的を射ていると私は感じていた。
社会人4年目になった私たち。
選ぶお店は学生時代よりランクアップしたものの、変わらず渋谷にいるし、ドレッシング多めのシーザーサラダをつまみにビールを飲んでいる。
「ねぇ、慎吾は今“特定の”彼女いるの?モテるからって遊びまくってるんだろうけど」
しんみりした空気を、祐奈が毒舌で打開した。
「特定の、とか言うなよ。彼女はいませんよ〜」
「えっ、いないの!?」
思わず心の声が漏れ、それを見逃さなかったアキラが、すかさず私たちをひやかした。
「てか、ふたりお似合いじゃね?慎吾って美和みたいなの好きだろ。メイク薄め、爆美女って程じゃないけど、謎に色気ある系」
「あのさ。それ褒めてないよね…」
私はアキラを睨み、祐奈は「やめなよ」と止めたが、慎吾はその発言を否定はしなかった。
盛り上がるアキラと、それに乗っかる慎吾。
「もう、いいかげんやめなってば〜」
祐奈がうんざりしながら言う。
私は苦笑いで通したが、この会が終わった後、慎吾は本当にデートに誘ってきた。
この記事へのコメント